南の島の音楽は、小舟の上でつくられる。
いま、仕事でお借りしているCDが、絶賛とてもいいので紹介したくなりました。優れた音楽はネット配信の外に多いので気が抜けません。
タイトルは『Amamiaynu(アマミアイヌ)』。言葉通り奄美大島とアイヌの伝統音楽を掛け合わせたような音楽で、呼びかけた人は朝崎郁恵さん。奄美伝統音楽の超ベテラン歌手で、この人のライブを数年前に聴いたことがあります。その時には何と82歳だったかな。とは言え、そのお歳とは思えない張りのある声に驚き呆れ、目が覚める思いでした。こんな活動までされていたとは。
で、いいんですよ。なんとなくシリアスな音楽を想像していたけれど、とんでもない。全編じわじわ楽しいのです。琉球民謡でもない、もちろんレゲェでもない、聞いたことのないリズムで、小さな帆をかけて小舟に乗っているような、ワクワクした音。島の音楽は小舟の上で生まれる、と言っていた、ライ・クーダーの言葉は本当だった。
とくに緩〜く響く弦楽器がいいんだけど、これがトンコリなのかな? 歌詞のほとんどは島の自然や暮らしについて。島から島へ、旅をしているような気分になれます。奄美の音楽とアイヌの音楽をいったんバラバラにして、再び一本に組み合わせてできた新しくて懐かしい音。
返す刀で、ここに加わったアイヌのユニット『カピウ&アパッポ』を聴いてみました。この姉妹の活動のようすは映画にもなっています。こちらは、あまりに素朴な歌詞にもやられます。キツネが鳴いているよ、とか、森の中を歩くよ、とか、それだけのことが、なぜこんなにいい曲になるのだろう? そして何より、アイヌの子守歌には泣けます。人類が初めて歌った歌は子守歌だという説があるけれど、まさにそんな感じ。
日本列島の北と南には、まだまだいい伝統音楽がたくさん生きているんですね。まだまだ旅が必要だ。