見出し画像

郡上おどり、最後の夜の提灯行列。

2ヶ月近くも続くお祭りの、最後の夜ってどうなるんだろう? そんな興味を持ったのは、去年初めて来た郡上おどりのときだった。
これが最後なので踊り狂うのか。終わってしまった寂しさに、誰もがうなだれているのだろうか。この一年間、水と踊りの街、郡上八幡にはいろいろと美しい風景を見せてもらったので、この街で最大のイベントの締めくくりを、一緒に過ごしてみたくなりました。

街のようすは、呆気ないくらいに静か。

結論から言いましょう。もっと町を挙げてソワソワしているのかと思っていたら、到着してみると、意外にいつも通りの郡上八幡なのでした。もう慣れているのだろうか。踊りはただの日常なのだろうか。これからこの夏最後の一夜が控えているというのに、この落ち着きぶり。交通規制も夕方からだという。改めてこの小さな町の”凄み”というか、貫禄のようなものを感じでしまう。

職人町の突き当たり、長敬寺の門から職人町を眺める。電線を地中に埋設した街並み。踊りが真っ最中の8月に来たときも、朝はいつもこんな感じの静けさだった。ちらほら観光客が現れるのは昼過ぎから。
ほとんどの軒先には提灯が飾られ、風鈴の音ばかりが鳴り響く。
お城の山には、こんな雲が浮かんでいるし。
吉田川にはいつものように釣り師の姿。「今年は水温が高いせいか、あまり大きな鮎がおらん」とのことでした。
お城から眺めるGJ8Manの街並み。

昼間は暑さのせいで人影はまばら。久しぶりにお城に登ってみると、観光客はちらほら。そして、山に染み入るセミの声。
こうして見ると、奥美濃の山中に息づく、ホントに小さな街なんだな、と思う。

郡上八幡城。昭和8年に復元された城ではあるけれど、木造の再建城としては、日本でいちばん古いらしい。石垣は野面積み。戦国時代に建てられた証です。
敵は攻めてきておらんかね。
お城から下りたら、いつも行列ができているお蕎麦屋さんにすんなりと入れた。ダイコンの辛みが効きます。踊りが始まるのは夜なので、宿に戻って昼寝しておくかな、と。

夕方、街に出てみると、そこは徐々に祭りの様相。

昼間はあれほど暑かったのに、日が落ちると吉田川から涼しい風が。踊り会場の交通規制も始まっていた。2023年の夏と共に、今年の郡上おどりも、いよいよ終わるんですねぇ。

踊り歌『かわさき』にも出てくる宮ヶ瀬橋より。吉田川には、キラキラと灯りが灯されていた。写真ではうまく伝わらないけれど、これは電気ではなくて、本物のロウソクなのですよ。お城がうつくし。
踊りが始まる夜8時までの間、飲食店はどこも満席になる。
僕にとっても、これがこの夏最後の郡上鮎になる、はず。
そして、いつものように踊りが始まった。踊りの輪から離れた人たちも、路地のあちこちで踊り始める。
これぞ、郡上おどりの盛装。下駄に浴衣、手ぬぐいは三種の神器。うちわは腰に差す。

最後の夜は、提灯を手に入れる。

最終日に限り、踊りの終わる11時から一時間ほど、お囃子の人たちを乗せる台車(おどり屋形)が商店街を練り歩くのだという。そして踊り手たちは、提灯を手に見送る、という踊りの提灯行列が行われる。
思えばお囃子の人たちは、一度屋形に登ったら、数時間は演奏を続けっ放しになり、徹夜踊りの夜には6時間に及ぶこともあるという。そのねぎらいを込めたパレードでもあるとのこと。
なるほど。そして提灯は希望者のみが購入。その収入は保存会の活動を支えるとのことなので、僕も買いました。

狭い新町商店街の道幅いっぱいに踊りの輪ができているので、提灯を買いに行くには踊りの真ん中を突っ切るのがいちばん早い。……お邪魔します。

それにしても、踊りの輪に加わらなくても勝手に踊っている人が多いし、子どもたちは歌いながら(けっこう艶っぽい歌詞も多いんですけどね…)、アカペラで踊りの稽古をしているし、いったいどうなっているんだ? この街は。

そして静かにフィナーレを迎える。

夜の11時。踊りの最後に歌われる曲、『まつさか』が終わり、わずかなスピーチと休憩の後に、おどり屋形が動き始め、提灯行列が始まった。

思えばこの日も、ここまで3時間ぶっ通しの演奏だった。
この夏、何度も繰り返し聞いていた踊り歌とともに、行列は進む。
行列を先導する人たち。普段、街の中で見かける顔もちらほら。
去年の秋、夜の7時には誰も歩いていなかった新町通には、夜の11時過ぎてもこの人の波。
大きな混乱もなく、祭り囃子と共に、静かに行列は進む。
そしてゴールが近づいた。暑かった今年の夏が、もうすぐ終わる。
郡上市八幡町旧庁舎記念館前にゴール。その後は特にセレモニーは無く、短いスピーチの後、最後の三本締めにて、めでたくお開き。オトナのフィナーレでした。

いいものを見せていただきました。初めて郡上おどりを見てから、一年が経ちました。これで思い残すことなく、暑かった今年の夏を終えることができそうです。

履き物屋さんの店先にて。おっと、下駄じゃないのがちょっと残念かな。
ありがとう、GJ8Man。来年もまた来れるかな。

いいなと思ったら応援しよう!