郡上おどり、最後の夜の提灯行列。
2ヶ月近くも続くお祭りの、最後の夜ってどうなるんだろう? そんな興味を持ったのは、去年初めて来た郡上おどりのときだった。
これが最後なので踊り狂うのか。終わってしまった寂しさに、誰もがうなだれているのだろうか。この一年間、水と踊りの街、郡上八幡にはいろいろと美しい風景を見せてもらったので、この街で最大のイベントの締めくくりを、一緒に過ごしてみたくなりました。
街のようすは、呆気ないくらいに静か。
結論から言いましょう。もっと町を挙げてソワソワしているのかと思っていたら、到着してみると、意外にいつも通りの郡上八幡なのでした。もう慣れているのだろうか。踊りはただの日常なのだろうか。これからこの夏最後の一夜が控えているというのに、この落ち着きぶり。交通規制も夕方からだという。改めてこの小さな町の”凄み”というか、貫禄のようなものを感じでしまう。
昼間は暑さのせいで人影はまばら。久しぶりにお城に登ってみると、観光客はちらほら。そして、山に染み入るセミの声。
こうして見ると、奥美濃の山中に息づく、ホントに小さな街なんだな、と思う。
夕方、街に出てみると、そこは徐々に祭りの様相。
昼間はあれほど暑かったのに、日が落ちると吉田川から涼しい風が。踊り会場の交通規制も始まっていた。2023年の夏と共に、今年の郡上おどりも、いよいよ終わるんですねぇ。
最後の夜は、提灯を手に入れる。
最終日に限り、踊りの終わる11時から一時間ほど、お囃子の人たちを乗せる台車(おどり屋形)が商店街を練り歩くのだという。そして踊り手たちは、提灯を手に見送る、という踊りの提灯行列が行われる。
思えばお囃子の人たちは、一度屋形に登ったら、数時間は演奏を続けっ放しになり、徹夜踊りの夜には6時間に及ぶこともあるという。そのねぎらいを込めたパレードでもあるとのこと。
なるほど。そして提灯は希望者のみが購入。その収入は保存会の活動を支えるとのことなので、僕も買いました。
それにしても、踊りの輪に加わらなくても勝手に踊っている人が多いし、子どもたちは歌いながら(けっこう艶っぽい歌詞も多いんですけどね…)、アカペラで踊りの稽古をしているし、いったいどうなっているんだ? この街は。
そして静かにフィナーレを迎える。
夜の11時。踊りの最後に歌われる曲、『まつさか』が終わり、わずかなスピーチと休憩の後に、おどり屋形が動き始め、提灯行列が始まった。
いいものを見せていただきました。初めて郡上おどりを見てから、一年が経ちました。これで思い残すことなく、暑かった今年の夏を終えることができそうです。