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冬の光④ 富士さん一周

(前回からの続き)
帰る日の早朝、オミゴトな朝焼けを見ながら二度寝してしまい、再び目を覚ました朝の9時頃には、雲ひとつない快晴になっていた。

チェックアウト

チェックアウトは11時。その後は裾野インターから旧東名高速に乗って帰るだけの予定。とは言えめったに見ない快晴なので、あらゆる方角から富士さんがまる見えかもしれない。だったら少し早めに出て、富士さんを右回りに一周してから帰ればどうだろう? というアイデアが浮かんだ。
部屋でコーヒーだけ淹れて、宿の朝食はパスして、昨日買っておいたパンだけ食べて、荷物をまとめて、と。

2日前からずっと同じ位置で見ているんだけど、まったく飽きることはなかった。
それじゃ、また来ますね、富士さま。

富士さん一周の自転車レースがあるくらいだから、周りはグルリと国道で繋がっている。その距離はなんと約120km。東京から御殿場くらいの距離だ。富士さんはデカいのだ。

最初は白糸の滝を目指す

最初にことわっておきたいことがひとつ。
実は今回、明るい時間に帰り着きたかったという事情があり、御殿場を出て最初の絶景ポイントには行っていない。それはどこかと言うと、御殿場駅方面から自衛隊の北富士演習場を貫通して、須山地区に抜ける国道469号。

ここは一面のススキの草原で、ここから見る富士さんは草原にガツンと巨大な富士さんだけがあって、すごいんです。怖いくらいです。新東名高速の新御殿場インターと沼津駿河湾サービスエリアとの間の区間から見える、あの神のような富士さんなのだけど、見るたびに、たしかに火山なんだなぁと思う。巨大な富士さんが、まるで地面から生えてきたかのように見えます。
しかも山容が左右非対称に見えるポイントがあり、多くの日本人が写真で見慣れた左右対称の富士さんとは、少しオモムキの異なる姿も見せてくれます。

ただし、この道はゆっくり眺めたり撮影できるポイントが少ないし、けっこう交通量が多いので、初めて行く方は気をつけてください。

これは到着した日に撮った宝永火口。前述のススキの草原から、周回道路に戻る途中で観ることができます。カーナビで富士サファリパークや富士山資料館(現在閉鎖中)を目指すとよいでしょう。

ということで、早く帰り着くルートとして、最初に白糸の滝を目指す。
この道は、原生林の中、工業団地などが並ぶ、けっこう退屈な道です。ほんの一瞬垣間見える富士さんは、こんな感じです。

山頂が尖って見えます。あそこが富士さんの最高地点、剣が峰ですね。

ま、とにかく、日陰の急カーブと路面の凍結に気をつけながら、白糸の滝の駐車場に到着。ここにはゆっくり撮影できるポイントもあるので、コンビニでコーヒーを買って、富士さんと向き合う。

どうですか、白糸の滝から見る富士さん。

ここまで来ると、真西の斜面に大きく裂けたような溝が目立ちます。あれは日本三大崩落のひとつで、「大沢崩れ」と呼ばれる谷です。谷の深さは150m、幅は500mもあるらしい。しかも年に1mずつ広がっているという。
詳しくはこちらで。

昔の写真と比べると、徐々に山容が変わっていることがわかります。100年後〜200年後は、どんな姿になっているのだろう? 心配ですよね。

続いて朝霧高原

白糸の滝あたりから徐々にキャンプ場や牧場が増え、リゾート感が増してきます。

朝霧高原に入ったあたり。大沢崩れの位置で、だいたいどのあたりにいるのかがわかります。
朝霧高原の駐車スペース。トイレもあります。
拡大してみる、険しい山容。
もひとつオマケに、空からの写真も入れておきましょう。撮影は2020年1月。

この辺り、雑誌の撮影では何度も何度も来ていた場所です。アウトドアとか、自転車とか、クルマとか。いつも日帰りだったけど、いつ来ても風景が違うので、何度同じ場所に来ても飽きることはありません。

西湖にて、『光る君へ』で聞いた中宮彰子の台詞を思い出す

朝霧高原まで来ると、行き先表示に本栖湖が現れます。もう半分回ったんだな、というあたりでしょうか。
本栖湖といえば、千円札の裏側の富士さんが書かれたポイント。ぜひ見に行きたいけれど、ふと見ると、山頂に雲がかかり始めました。あそこまで行くと雲が増えるかな、帰りが遅くなるかな、などなどの理由により、本栖湖はパス。帰りのルートに無駄がない、西湖に行くことにしましょう。

西湖です。ここから見る山頂のカタチが好きなのだけど、ちょうど雲の中。
水面の輝きがうつくし。

この風景の中、なぜか去年の大河ドラマ『光る君へ』の中で、中宮彰子(なかみやあきこ、ではありませんよ)が藤式部に初めて語った台詞を思い出しました。
「好きな色は青。冬が好き。冬の青い空が好き」

そしてここも青一色の世界でした。
もともと僕は寒い冬が大嫌いだったけれど、冬の光に気づいてからは、積極的に出かけるようになりました。中宮さま、ありがとう。

河口湖駅は怒濤の混雑

来た道を、そのまま道なりに進めば河口湖。この辺りから見る富士さんは本当に大きい。見上げるほど大きいのだけど、写真に撮るとなぜか小さく感じられる。

この時間帯は逆光。雪原が怪しく光る富士さんなのであります。

河口湖大橋を渡らずに、そのまま湖の北側を行くと絶景ポイントがあるけれど、あそこは外国人観光客で大混雑になっているはず。今回は湖越しの富士さんは避けて、富士急の河口湖駅に向かってみました。

河口湖越しに見る富士さん。ご参考までに。撮影は2023年11月。

すると河口湖駅前も大混雑。
数年前まで、この時期の河口湖駅なんて、ほとんど人が歩いていなかった。それが今じゃどうだい、外国人観光客で、駅の構内もバス停も京都駅前のような混雑ぶり。そりゃぁ観光業界の人は喜ぶだろうけどさ。

どこに行っても、列、列、列、の駅の構内。

観光公害でたびたび話題になる「屋根に富士さんが乗ったコンビニ」って、河口湖駅の横にあるんですね。知らなかった。なぜか目隠し用の黒幕は取り払われており、狭い歩道には黒山の人だかり。地元のお年寄りは、あそこを歩いては通れないでしょうね。せっかくだから、そのコンビニで買い物だけしようかと思いましたが、バカバカしいのでやめました。

富士急が賑わうことはよいことです。

ここから10分ほどで行ける本町二丁目商店街も、おそらく絶景と大混雑なのでしょう。見に行くにも駐車場が小さい商店街なので、日が傾き始めた今日はあきらめ。前回行ったときのnoteでお許しください。

そして、ここから山中湖、と行きたいところだけど、その日は事情により、明るい時間に帰り着きたい。そのためには、そろそろ始まるであろう東名高速の渋滞が始まる前に通過したい。

ということで、河口湖インターへ。そのまま帰ろうと思います。
この道から見える、ススキの草原と富士さんの絶景もいいですね。とは言えもちろん運転中なので撮影はできません。次に来るときは、この辺りの一般道を走りながら、ゆっくり眺めてみたいと思いました。

ところでこの道、高速に乗ったまま東京方面には行けないのですね。そうとは知らず、行きに来た裾野インターまで戻ってしまいました。これで本当の一周です。
いっそのこと、このままインターを出て、ススキの草原越しの富士さんを見に行こうかと思ったのだけど、それは欲張りすぎですね。次回のお楽しみということにして、2025年の初詣を終えたのでした。

おかげさまで、渋滞に遭うこともなく、順調に帰宅。
夕方は、神奈川県から富士さんのシルエットを拝むことができました。
左に宝永火口が見える。ということは、ここは宿からほぼ90度の位置にあるんだな。宝永火口の他には、大沢崩れなどの崩落跡、剣が峰(山頂の一番高い、少し突き出たところ)などにより、今はどの方角にいるのかがわかる。そうなったら富士さん入門編は終了です。

さっきまで、あそこにいたんだなぁ…

おしまい。






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