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中国のゲーム規制について39.3℃の頭で考えてみた

 久しぶりに39℃超の発熱で、ぶっ倒れたので、布団にこもっている間、中国のゲーム規制の件について考えていた。
 今回の件は、日本のゲーム業界にとって悲報なのか、朗報なのか?

 その内容を自分の備忘をかねて、noteにまとめてみる。

※注※
筆者は中国ゲーム業界の専門家でもなんでもない、普通のいちゲームクリエイターである。



2021年までの日本と中国のゲーム業界での位置付けについて、主観100%で整理

 最初に、中国のゲーム業界における位置づけを主観まみれで整理してみる。

 以下は2021の世界規模の売上ランキングとして公開された情報。

 1位のPUBGがテンセント資本が入ってることを考えると、TOP3は中国系だ。つよい。圧倒的強さ。
 ここにランクインしたゲームは、日本でも一定数のユーザーが存在し、国内ランキングにもしばしば登場してくる。

 一方で日本製のアプリはというと……。
 残念ながら世界ランキング上位から脱落してしまった。
 2020年時点では、モンストとFGOがランクインしてはいたのだけれど……。

 日本のランキングだけ見ていると、実感しづらいかもしれないが、今やゲームの世界で覇権を取ったのは中国なのだ。

 「この流れは止まりそうにないな」と、個人的に強く感じたのは2018年のアズールレーン登場。
 日本のアニメ・萌え文化も独自にカルチャライズできるようになったことを見せつけられたようで、非常に衝撃を受けた。 

 そして2020年の原神登場。
 個人的にはこれが決定的だった。
 中国というアジア圏で最大の市場は、日本的なカルチャーやコンテンツを、日本から輸入する必要性が無くなったのだ。

 むしろ、かつてジャパニメーションやJRPG的に扱われたものは、アジア系の表現として、中国/韓国も含めて世界に発信されるのだろう。
 そうなった時に、日本に突き付けられるのは、国際競争力の低さと、国内のみで戦った場合の市場規模の小ささだ。
 それはそのまま、研究費やクリエイターの賃金、プロジェクト規模という形で差になっていく。

「あとは、この差が開いていく一方なのだろうか……?」
そう感じていた2021年に事件が起きた――



2021年 中国にてゲーム規制が超強化

 2021年8月末。中国でかつてないゲーム規制が試行された。
18歳未満の子どもがオンラインゲームをするのは金、土、日曜と祝日の午後8~9時のみとする】

 同時に表現面での規制も強化。
【ゲームは政治色のない「純粋な娯楽」ではなく「正しい価値観」と「中国の歴史・文化への正しい理解」を反映したものであるべき】
 
という形でアプリリリースへの審査が厳正化した。

 この流れの中で、中国版FGOの中華系サーヴァントのイラストが非表示対応に。

 
「中国の規制は、対岸の火事ではなくなった……」
そう慄いたが、この審査厳正化の流れはさらに続く。

フォートナイトの中国版正式サービスに至らないまま終了。

 中国のITトップ企業BATの一角。T(テンセント)が出資している、エピックゲームス。
 その世界的ビッグタイトルでさえも、この規制の前に潰されてしまった
 
 そして、2022年。年明け早々にもたらされた、中国でのゲーム関連企業1.4万社倒産のニュースに至る。




これからのゲーム業界を色々と考えてみる

【中国大手メーカーのこと】

 ニュース記事にも書かれている通り、中国国外への投資やスタジオ設立の動きが加速していくのだろう。

 個人的にも某中国大手メーカーの日本スタジオからスカウトを受けて面談をしたのだけれど、彼らも当局の規制については憂慮しており、日本スタジオ設立はその対策の一つであると話していた。

 ということで、現在世界TOPの売上を持つ中国メーカーの資本が、各国に流れ込んでいくことが予想される。
 これはクリエイター目線で、喜ばしいことではある。

 一方で資本が海外に流れる動きを、中国当局がどこまで座視するのだろう? という疑問もある。
 そこから先を考えると、うかつに喜んでもいられないのかもしれない。

 

【倒産した中国のゲームメーカーのこと】

 1.4万社が倒産というのは衝撃的な数値だ。
 そこで働いていたスタッフのことを考えると、万単位のクリエイターが失業ているはずだ。

 日本のゲーム業界の従事者数が、確か2万5千人ほどだったと思うので、1Q程度の期間の間に、日本のゲーム業界をまるっと飲み込んで余りある人数が失業しているというのは、背筋が凍る。

 ここで気になるのは「彼らがどこへ行くのか?」ということだ。
 プログラマーは、サーバー側エンジニアなどは一般企業に転向できそうだ。
 そして、デザイナーはアニメや映像系に行くのではないか。
 
 実はゲーム規制から一か月後、アニメについても結構な表現規制が入ってはいる。

 ただ、元々中国は国産アニメには助成金や税優遇をするなど意欲的だったし、寡聞にして表現規制後に中国のアニメ制作会社が倒産という話は聞こえてこない。
 ※これは単純に情報収集不足な可能性もある……。

 ゲーム業界からの流民を全て抱えられるようなことはないだろうけれど、中国内の映像クリエイター志望者が中途含めて激増したのであれば、激しい競争と技術の進歩は、今より目覚ましいのではないか。

 昨今では「日本のアニメ業界が中国に外注される」みたいな話もあったが、日本に頼むまでもなく、中国国内に安価で優秀な映像デザイナーが溢れるようになるのかもしれない。

 昨今「雀魂」のアニメ化が発表されたが、海外で開発⇒中国国内で安価にアニメ化⇒プロモーションみたいな流れが当たり前な時代が来るのだろうか。

 プロモーション力でもこれ以上差をつけられたら、たまったもんじゃないのだが……。

 

【日本のゲーム業界への影響のこと】

 ゲーム規制の分かりやすい影響として、中国市場への挑戦が相当に難しくなったろう。
 フォートナイトの事例を考えれば、中国市場を当て込んだ戦略は、もはや現実的とは言えない。

 ただ、その影響はどれほどだろう?

 そもそも中国市場というのは、その規模自体は非常に魅力的ではあるが、参入障壁が非常に高い市場であり、中国で既に人気のある有名IPや、PS2以前からのメジャータイトル以外は、挑戦が難しかった環境でもある。

 そのため大手にとっては影響がでかいが、国内で細々と勝負しているような中堅以下のパブリッシャーやデベロッパーにとってはむしろ、中国資本が流れてくる恩恵の方が大きい可能性すらある。

 この辺は、今後の動きを見続けないといけないとは思うが……。 


【ゲーム業界全体への影響のこと】

 中国のゲーム規制は体力がない中国メーカーを薙ぎ倒していった。

 しかし、現状で世界の覇権を取った大手中国ゲームメーカーが、これで歩みを止めるとは思えない。
 この規制に対応したゲーム開発を進めていくことだろう。

 「18歳未満の子どもがオンラインゲームをするのは金、土、日曜と祝日の午後8~9時のみとする」
 
この規制への対策を突き詰めていくと、
「1週間に3時間だけ遊べば満足できる」
「週3時間だけ遊ぶことをプレイサイクルとする」
というようなゲームが生まれるのではないかと思っている。

 これを中国勢が成すのは非常に脅威だ。

 なぜなら、今現在「時間」の価値は、お金と同等かそれ以上に高い。
 その為ゲームは無料で遊べるものから、
「無料かつ短時間で遊べて満足/むしろ短時間しか遊べなくても納得感がある」
への進化が、次のステージではないかと個人的に考えているからだ。

 現状でも、「放置系」を標榜するゲームは散見されており、思想としては存在するが、実態としては短時間プレイにはなっておらず、上記のステージに至ったものは見たことがない。

 中国のゲーム規制は、中国メーカーの開発するゲームを、強制的にこのステージへと引き上げてしまうかもしれないのだ。

 そうなった時、ランキング上位以外の、2番目、3番目の優先度で遊ぶゲームは中国系タイトルが席巻するだろう。
 そして、ランキング上位タイトルが終焉を迎えたそのあとは、皆が遊んでいるゲームは、ほぼほぼ中国系という未来すらあり得る。




さて、それじゃあどうしようか

「アプリ時代の覇権は中国勢に奪われる。
 ならば、その次の時代を見すえて、今から仕込むしかない。
 次の時代は、デバイスの進化によって普及したVR/XR。
 5年先、10年先か分からないが、今のうちから仕事のキャリアを重ねつつ、時代が追いついたタイミングで、スタートダッシュを仕掛けられるように……」

 これが2020年入ってからの、個人的なキャリアパスの方向性だ。
 ゲーム規制の話が出たあとも、基本的にこの路線を変える必要はないな、というのが正直なところ。

 ただ、中国系メーカーの資本的な進出が日本国内で加速するようなら、これはいい機会だ。
 せっかくなので、しっかり勉強させてもらおうじゃないか。

 かつて、日本が安価な労働力を求めた結果、中国にノウハウを獲得されてしまったように、今度はこちらも学ばせてもらおう。

 未だに、ソウルクラッシュのシステムを参考にしたゲームを作り続けているのが日本だ。
 アプリ時代のゲームデザイン能力において、日本は後塵を拝しているのだ。

 自分は、名前で仕事が来るようなクリエイターではない。
 次の時代に向けて、貪欲に食らいついていかないと、いつかどこかで食いっぱぐれる。
 そういう意味では中国のゲーム規制もチャンスと捉えて、動いていきたい。


 ……なんてことを、39度の熱を出しながら、布団の中でずっと考えていたって話。
 なお以前も同じように発熱でぶっ倒れて、その時はずっとウマ娘のこと考えてた。


 なお、今回もコロナは陰性でした。
 どんどはれ。

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