Dragonfly少し弾いてみた
昨日の記事は不定期連載します。本日は午後の仕事がキャンセルになったので都心の楽器店を2つ回って、8本の34.5インチ5弦のドラゴンフライを試奏させていただきました、その印象を残しておきます。
2店でお二人の店員さんにご案内いただきましたが、どちらもコスパがいい、という点を強調されました。この材でこの価格は、非常にお買い得というところ。そして弾かないと良さはわからないとも言われました。個人的には、銘木、というか杢にあまり興味がありません。見た目で木材の値段が大きく変わるので、その材が音色に貢献しているか否かを見定めたいと、日頃から思っています。
ただ、稀少材と言われる樹種と、私の知る限りそこまで高くはないだろうと想像する樹種の、本体価格への転嫁の度合いが穏やかだなと感じ、そこは良心的と思います。プレミアムなキルトメイプルを選択するだけで10万跳ね上がる、みたいなことはザラにありますので、そこまでではないと感じました。おそらくコスパとはこのことを指していると思われます。
以上はどうでもいい話です。初めて触った1本は、まずはネックが太く厚い、一言でいえばゴツいなぁという印象です。ブリッジでの弦間ピッチは18mmなのですが、ナット幅は広め、従ってネックはスリムとは言えないものでした。もちろん、他の個体もそれは変わらず、剛性や音色を考えてのグリップデザインでしょうから文句は言えません。自分にとっての嗜好に合う、合わないの問題でしたら、理想的ではありませんでした。でも弾きにくいということはありません。むしろ厚みが安心感を生み、握りやすいなぁと、正直に思いました。
ネック材がメイプル3ピースをメインに、細いストリップ2本とで5ピース構造になっています。挟まれるのはウォルナットであったりブビンガであったりするようです。今ひとつスペック表記への信憑性が疑われるところですが、楽器の音色(というか鳴り)が様々で、この辺が原因かと思いました。より良い印象の個体はブビンガだったかなと想像するのですが、確認はしておりません。
このメーカーは私の好きなパーフェローを指板材の標準としており、アッシュボディとの組み合わせが、スペック的に好みであろうと推測したのですが、ベストと感じる個体はエボニー指板でした。ですから、やはり弾いてみないとわかりません。
ピックアップは、個人的には、だんぜんシングルコイルが好きです。ハムバッカーはタップできますが、それとはやはり違います。ハムが欲しければハム、シングルが欲しければシングルを選ぶべきと思います。ハムはいらないので、シングルを指名したいところですが、現在選択肢はそのほうが限定されます。トレンドはハム搭載で、コイル選択できるバリエイションの豊富さが重んじられるようです。私は年寄りなので置いて行かれているのでしょう。しかしハムの音は、それはそれで良かったです。
プリアンプは良質ですが設定が特徴的で、3バンドEQをセンタークリックの位置にしてアクティブにすると、パッシブよりも音量が下がります。ブーストしたい人に配慮したゲイン設定かもしれません。私はミドルの周波数切り替えを低い方にし、3バンド全てをややブーストして好みでした。
要はみんなが足元に置くプリアンプを入れているのと同じ事です。そうして出てくる音は、かなりいいと思います。誰もがカッコいいと言うような骨太でガッツのある、抜ける音が得られます。一見、生身で勝負風の見た目ですが、単なるバッファーではなく、音作ってなんぼなプリアンプと組み合わせて光るタイプでした。「業界」っぽいです。
楽器トータルで、かなり練れている高水準なツールです。主張があります。その方向性ははっきりしていて、強い音を出そうとする男気を感じます。どれもが優秀な中で、これは美しい、と思えるトーンを出せる個体を見つけました。それはジャズベースのシルエットから、半ば強引にシングルカットデザインに変換したようなモデルでした。あれは正直欲しいと思いました。今述べたプリアンプの話はネガティブなものではないです。パッシブの時も元気があって普通に良いです。
ひとつだけ気付いたことを記すと、ライバルメーカーの楽器に較べるとフレット端の処理がもう一つでした。もっと丸めて角を取って欲しいですし、なんならバリが出そうな気配も見られます。後から処理できますが、最初から手篤く丸めて下されば、それも売りになるのではと思います。
重量は4.5kg前後が平均といったところで、軽量化を目指してはいませんね。音優先でしょう。私が欲しくなった個体は、軽くはありませんでした。それを許容できるかどうか。また34.5インチスケールのローB弦に対するメリットもさほどではありません。反面、34インチの楽器と弾き心地も高音弦の膨よかさも区別が付かないのは良い点でもあります。そうした需要への配慮でしょう。