35インチ5弦にまつわる最近の話

5年くらいは前だろうか、私はシトロンのスワローモデルを持っていました。本人と同仕様ではありません。シグネチャーモデルをベースとしたショップオーダー品の中古であり、設定は35インチ、ハイC、弦間17mmでした。ライブのほか、営業でも使ったことがあります。仕事の歌伴で、初見でも問題なく弾いていましたが、ある曲の大事なところでローBの運指で弾いてしまい、出音が4度高いラインを取るというミスを犯しました。歌手の方がこちらを振り返った時の顔を、今も覚えています。

ハイCより6弦、35インチより34で、などと理由を付けて、この素晴らしい楽器を手放しました。特に悔やむことはありませんが、その経験は今の指針について、重要なヒントを与えています。17mmピッチは狭すぎて弾きにくいということは一切ありません。35インチは少し厳しいけれど、ローポジションに手が届けば、また楽器自体の吊った時のバランスが最良の部類であれば、ステージでも使うことはできそうです。

昨年YoutubeでB'zのスタジオライブが曲毎に配信されていました。思い出深きアバコスタジオで収録され、その思い入れで見てみたところ、ベースの種子田さんが使用するベースが目に留まり、調べたところプロヴィジョン製とのことでした。すぐに在庫する店へ試奏へ伺い、3本を弾かせていただきました。仕様違いでしたが、そのうち1本がとても気に入り、35インチですからスルーしたのですが、強い印象が残り、これを元に6弦ベースをオーダーしてみようと考えました。ちなみに、同個体は1番に売れてしまったので、やはり衆目が認める良さだったのでしょう。

尺は34にして16mm弦間で製作可能かと問い合わせると前向きな返答を頂きました。希望する項目を伝え、見積を頂戴するやり取りの手前でコロナに罹患してしまい、一切の与力は消失して、生きながらえることだけが目下のゴールとなりました。その後数ヶ月、今から一年前に家を買おうと思い立ち(実際は勧められてですが)、その後の8ヵ月はただただリフォームに奔走しました。

プロビジョンさんには、折を見て打ち合わせを再開しようと思いながら、事情をお伝えすることもせず、案件は宙に浮いたままになっています。6弦ベースは別の場所に縁ができてしまったので、種子田さんモデルは、今ならぴったりという気もします。34インチの5弦ベースも2本試奏しましたが、それらも優秀でした。

私がベストだと思った個体は、キルトメイプルトップのアッシュバック、メイプルの1ピースネックにパーフェロー指板でした。組み合わせだけで語るのは危険ですが、先入観無しに弾いて、これは良しと思うものがパーフェローである確率は本当に高いと、この時にも感じた次第です。

種子田さんモデルは、まだ2点ほど国内に在庫がある様子ですが、今は選択肢に含まれていません。好印象だったあの個体を超えられないと憶測するからです。オーダーするのはリスクが大きいと繰り返し述べているとおりです。今35インチに積極的なのは、あの日のプロヴィジョンによって与えられたインパクトに間違いありません。

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