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floatia designs TFDI-02について少し

Twitterで知り合い、リアルでも親しくさせて頂いているFloatia Designsさんから、こちらの記事でトランスだとかニーブだとか騒いでいるのを「おいおい…」と思われたかはわかりませんが、試してみませんかと嬉しいオファーをいただき、今日TFDIが届きました。Youtuberじゃないけどいいんですかね。デモ音源、かんたんには上げられなくて誌上レビューになってしまいますが。

今のベース再生環境は、例のLine6 HX STOMPから4cablesでALBIT A1FDproに絡んで、それのアンバランスアウトからはAshdown ABM600 Evo4 Anniversary のリターンに入り、Bergantinoの10x2のキャビを2台スタックした4Ω、410状態のスピーカーを爆音で鳴らすか、バランスアウトからYAMAHAのミキサーに入りオーディオアンプを駆動してモニタースピーカー(本気で音楽聴く用のサブの方のシステム)で練習用オケなどとミックスして鳴らすかのどちらかになります。

練習は6弦フレットレスが中心になりますので後者の方、つまりラインアウトをDTM系のモニター環境で鳴らしています。HX STOMPで使うのは基本リバーブだけ、A1FDもプリアンプ部分へのループはバイパスしていることが多いので、トータルでの楽器用プリアンプと見なせるのはA1FDのリターン回路以降のみとなります。

TFDI-02はディスクリートのプリアンプ回路とトランスによるバランスアウトを装備した、品種名はDIとなっていますが、実質ラインドライバーです。楽器の音を受けてパワーアンプ/ミキサーに送るためのものですので、現状システムのA1FDが受け持っている場所で交換可能です。

もちろん楽器を(パッシブでも)直接入力できるので、実際にはHX STOMP〜とか、もう外してしまって、単純に楽器からのシールドを突っ込んで、バランスアウトはミキサーへ、プリアンプアウトはパワーアンプへと、要はベースアンプのフロントエンドそのものとして使うことが想定されています。なので、まずはこの「ダイレクト」接続を試しました。今日のところは、ABMを素直に使った場合と、ヘッドアンプとしてTFDIを用いてABMをパワーアンプとして使う場合の2通りのみの比較です。爆音です!

ABMはゲインステージにVUメーターがあり、ピーク時にどれだけ激しく音量差が出るか、目で確認できます。フラットワウンド弦を張ったプレシジョンベースを好んで弾くのですが、E弦の暴れた時の音量はメーターの振れ幅で通常時の2倍を超えます。めちゃくちゃダイナミックレンジが広い、というか歴代ナンバーワンです。ちなみにFreedom製でPUはVoodoo、弦はLa Bella。

それを受け止められる(歪ませない)ゲインは、ABMはノッチになっているので4目盛り上げるところまでです。位置で言うと9時。600Wアンプで4Ω、スピーカーも4発が鳴りますので、この狭い部屋の中で聞いていられる音量を得るには、アウトプットボリュームを3ノッチ上げるまで(8時)がいいとこ。その状態で楽しい音は出ています。これがABM直。

TFDIに替えて、これはゲインノブとアウトプットノブの2コントロールですが、先に述べたABMのプリアンプ部分で、EQを始めとするオプショナルな回路を全部パスした時の使い勝手と同じことになります。ゲインコントロールはピークで歪まないようにさせると聴感で8時と9時の間くらい、音量を合わせるとアウトプットが15時くらいとなります。

ゲインがこの辺りだと、クリアですが大人しくて優等生的です。そこからピーク時の歪みを容認して音に色艶が乗ってくるところを求め、通常のピッキングでは歪まない限界まで上げると12時辺りでした。その先はオーバードライブします。マックスではディストーション的ですが、暴れまくる倍音ということはなく、やはり真面目。逆に古くて出力不足のアンプがオーバーロードしているブーミーさとも違うので、個人的には、これを歪みデバイスとしては使わないと思います。凶暴さ、対局のレトロさ、どちら方向へもキャラ付けされていないので、歪むけど、それはお駄賃みたいなもの。というかローアウトプットの楽器にもしっかりゲインが稼げる対応力の広さだと思います。ノイズは当然皆無です。(ABMのファンがうるさすぎて聞こえないだけ?)

というわけで、このPBではゲイン:アウトが9時:15時よりも12時:12時の方が魅力は高いです。JBにしてみたり5弦にしてみたり、それのアクティブ/パッシブを切り替えてみたりしましたが、先のPBほどダイナミックレンジがありませんから、ゲインはやや高めに設定でき、音にちゃんと色気を乗せることができます。

そうそう、音の傾向というか、音色のインプレッションしていないですね。ABMの真空管プリアンプは、色づけは感じませんが華やかで楽しい音がします。中高域のくっきり感が強めでパンチがあります。真空管デバイスをよく温かい・太いと形容しますが、私には、このようなキャラクターがチューブ本来の印象。大袈裟に言えば輪廓が強調される感じです。

TFDIに替えた瞬間、ぐっとウォームになります。張り出しは穏当で強調がありません。ただレンジが広がり、より低域方向に鳴りがあるのが見て取れます。ローが出ると言うと「重低音」というイメージかもしれませんが、そうではなくて、より低周波まで再生される、つまりレンジが広がっています。これがミッドに被って濁すというようなことはありません。クリアです。ハイについても同様ですね。パンチ力を感じさせるものではなく、より高音域の金属質な部分を自然に聞こえさせてくれています。強調によるレンジ感の広がりではなくて、周波数特性そのものの広がりを目の当たりにすることになります。優秀なトランジスタアンプの印象であり、オーディオ的でもあります。

毎日こんな記事を書いていますが、私はさして機材マニアではなくて(作ったり分解したりしませんから)、まぁたまたま興味を持ったものを、自分の環境で自分の経験を通じて評価したという、その年数の長さだけの人間で、レコーディングスタジオをハシゴするような売れっ子であったこともありませんから、何もかも全部見知っているわけではありません。そんな狭い知見の中で、こういうアイテムは見たことがありませんね。そして、ニーブを使った録音の話を以前書きましたが、音の印象で一番近いのはその時の音です。ニーブっぽい、と言ったら誤りでしょう。なんていったら良いかな。そういうカテゴリーの機材かな、って感じ。レコーディング機材を持ち運べ、また、気軽に使えるようにした、というのが正解ですかね。そして、次の機材に良き状態の信号を手渡せる、職務に忠実、みたいな。

コンパクト・エフェクター・カテゴリーのコンプレッサーなどで、スタジオ機器と同等などと表現されるものがあって、確かにそれが嘘じゃないものがあると思います。Originのトランス入りのとか。FloatiaのTFDIは、音の印象がスタジオ機材のそれです。

実を言うと、Floatia Designsさんからは、おそらくこの手の機材を販売され始めた当初から、当方へのアプローチがあり、色々とお話しさせて頂いてきました。先に出ていたプリアンプSapphireにつきましても、レンタルできる機会をいただいておりましたが、使いどころを想定できず、テストだけに終わってしまいそうでしたのでお断りをしていました。店頭では鳴らしたことがあり素晴らしいと感じていたものの、それでも導入を考えなかったのは、24V電源を引っ張らなければならないことが原因でした。

仕事場での足元、電源引き回しの事情等が、既に9Vをいくつか要しているほかに24Vも(むろん100Vもでしたが)となると、やや面倒を強いられる状況であり、音をそこまで追究しなくても良いと思っていたからです。あれから様々な変化が起きているのはご承知の通りですが、私の活動局面でも機材の縛りはほとんど考える必要が無くなり、純粋に自分の使いたい物を用意できるようになりました。あとは、それとポータビリティとの兼ね合いだけです。それで昨年、少しアンプ類を模索し始めたのでした。今回のお話は、ですからとても有難いものとなりました。

本品を送って頂く時に、これは私物であるから市販品とは違うとおっしゃっていて、FETではなくバイポーラを使っていると説明を受けました。ですので、上記の印象は、市販品と異なる可能性があります。

私の中では、デバイスの種類として、真空管、トランジスタならディスクリートとIC、の3カテゴリしか無かったのですが、FET vs バイポーラという概念を初めて意識することとなりました。カタログなどで、用語として目にはしていましたが、設計できる人間ではないので、それが音にどう関連付けられるのか皆目見当が付きませんでした。

つい前前段(市販品と異なるのくだり)を書く寸前、もう締めの言葉を考え始めていた時、ふとそれを思い出して、Floatiaさんのwebページを見てみました。販売品の中にFDOA-01、FDOA-02と名付けられた部品があり、それらがJ-FET、BIpolarのInpurt StageとなりAPIのオペアンプと互換という商品です。
http://floatia-designs.blogspot.com/p/products.html

APIについては話を広げませんが、それぞれのプロダクトページに音質についてのコメントが書かれています。

以下、部分的に引用させて頂きます
J-FET:入力はバイポーラTrタイプと比べて高感度&ハイ・インピーダンスとなっており、音の立ち上がり、表現力は他のDOA(ディスクリートオペアンプ、筆者注)を圧倒します。
Bipolar:FDOA-01(J-FETの方、筆者注)と比較すると落ち着きのある中低域に密度のあるサウンドになっています。

今回お借りしているものは後者になります。私の感じている音色の傾向が、ここに書かれている説明文と合致していて安心しました。また「大人しい」と述べた部分は「落ち着きのある」と表現されています。また市販品の方には高感度なデバイスを選ぶというのも、汎用のプロダクトとして正解であるような気がいたします。ニーブ的な世界と、私は曖昧にしか例えられませんでしたが、それは一種マニアックの極みだと思うからです。面白い製品です。
ひとまずおわり



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