リハーサルでの反省を少し
来週、都内の500席程度のホールで無観客の配信コンサートがあります。若い女性歌手のデビュー5周年とのことですが、本来は2020年に企画されていたものです。昨年は2/17にリハーサルを行い、本番を前にコロナ禍の影響を受けて延期が決まり、7月にリスケジュールされたのが再度中止となり、予定から1年後の同日に決行することが決まりました。今年1月からの緊急事態宣言が3/7まで延長されたために、やむなく無観客開催となりました。苦渋の決断ですが、やると決まった時点で幸いと思わなくてはなりません。あとは、当日までスタッフやメンバーに感染者が出ないことを祈るばかりです。私も気をつけます。
あれから1年と1日後の今日、またリハーサルがありました。少しだけメンバーが入れ替わっていました。私の生徒さんに、こうしたコンサートのリハーサルについてお尋ねがあったので記しておきます。仕事をされている方にとっては常識の範疇ですので退屈かもしれません。
先日はジャズのライブをやりました。普通、誘われて現場に行くと、本番直前に少しのリハーサルをやるといった形態が多いです。練習と言うより打ち合わせ的な。どんな曲をやって、この曲はこういう感じで、というのを音を出しながらリーダーがメンバーに伝える感じです。でも本格的なジャズのミュージシャンはそれすらもやらないで、もう来ていきなりステージ上がって、そこで全てが進行するというのも、私には敷居の高い世界ですが、普通に存在します。そこで初めまして、の挨拶を交わすことも珍しくありません。まぁうちらは、事前にコアなメンバーで一旦音出しはしています。そして本番前にもスタジオを借りて全員が揃う形で1曲につき1、2度はさらいました。
で、生徒さんは、練習という言葉を使われますが、コンサートのリハーサルは全然、練習(稽古)とは異質なものです。コンサートの全体像はアーティストの側で緻密に組み上げられており、時、分、秒まで記入された進行表と数十ページの台本がすでに作られています。アレンジャーがコンサート用の楽器編成に応じて用意し、パート譜に書き直されたものが、そこでの演奏内容となります。私たちは持参するように指定された楽器を、決められた時間に広いスタジオ(たいていはステージでの並びに座らされます)の所定の位置にセットし、本番でオペレートするPAの方がきちんと音響のセッティングを行います。リハーサルですが本番同様の手順でサウンドチェックを行います。
演奏家とともに、音響、照明のスタッフ、演出家や舞台監督、レコード会社の担当者、所属事務所の関係者などが同席し、想定した演目内容を本番さながらに実演して見せて細部の確認へと段取りを進めるわけです。というわけで、稽古(練習)っていうことは、その場においてはほぼ無しです。ミュージカルなど、お芝居を伴ったりするとまた違いますが…。
今日の話に戻ります。実際、人と一緒に楽器を弾くなどしたのは、つまり合奏ですが、先週のライブを除けばきっちり1年ぶりです。あのリハーサルが最後で、このリハーサルが再開の幕開けというわけです。久しぶりにお会いしたメンバーの方たちは、殆どの人が同じでした。そしてたぶん皆さんにとって、こんな状況は初めて経験するものだったと思います。私自身で言えば、過去に1年間休職宣言、というか海外逃亡というか、まぁ日本から消えていた時がありますのでその期間は全くと言って良いくらい演奏しなかったですが、そんなのは珍しい部類です。
ところが、やはり飢餓の状態にあったからでしょうか。最初こそ様子見の気配がありましたが、次第にアンサンブルが熱気を帯びてきました。私の座り位置のそばに歌手の方が居りましたが、「かっこいい」と漏らす声が何度も聞こえました。この方の1年辛抱した気持ちは私たちの比ではありません。「5周年コンサート」は1年経ってもタイトルを変えずに行われます。リベンジなのです。
ああ、なんか暖かい気持ちが、予定していないことを書き進めている! 反省でしたね。ここからは、たいていの皆さんが期待している機材にまつわる話になります。
用意されたアンプはTrace Elliotでした。画像にありませんが10インチ4発のキャビネット(トゥイーター無し)が置かれています。持っていった足元は昨日の画像のもの。そして、ベースアンプをパワーアンプとしてのみ使うためのドライバー(兼DI)としてFloatia DesignsのTFDIを持参しています。元々、このコンサートで使用することを前提にお借りしています。
こちらはお弁当の画像ですが、上部に見えておりますCountry Manがスタジオの備品ですが用意されており、内気な私は、ライン送りに手持ちのDIの使用を申し出られず、はい、結局使用しなかったです。すみません。
アンプへも、Line6からDIへのパラアウトからインプット・ジャックへ素直に挿して使っています。超久しぶりのトレースでしたが、ちょっと難儀しました。グライコはよく効くので音色自体はバランスを出せるのですが、これくらいべたっと潰れた、ダイナミクスの付かない音になってしまったことはあまり経験がなく、戸惑いました。
というわけで、結局Line6でデジタル処理していること、真空管のプリセクションを通過させていること(これによって音的には古いAmpegみたいになります)などの功罪がある気がします。今回ボリュームペダルによる劣化を避けられるという点で導入を進めてきましたが、次回、本番に使う自前のアンプからの出音で、その後の処遇を決めたいと思います。
そしてもう一つ。Line6のチューナー機能が便利でいいと思っていましたが、これ、常時表示(チューナーモードにしたまま)にして使えないんですよね。チューナーonにしたときのサウンドをミュートするか、鳴らすかの設定ができますが、鳴らす時にはエフェクトセッティングが全無視されてバイパス音になるみたいです。そうなるとボリュームペダルとして使えない困った状態になります。
チューニングしようとしてそのモードに入り、音はミュートさせますから、曲を弾いている時にはピッチの正確さはモニターできないんですね。実は昔からそこにこだわっていました。曲中で自分のピッチを監視できること、一応こっちが正しく出せていれば、アンサンブルに乗っかってくる他の方に対して自信が持てます。ハーモニーが綺麗でない時に、それが自分の責任かどうかを、やはり確認したいのですね。フレット付きの楽器を弾いている場合の話ですが。フレットレスだったらピッチのコントロールは耳でできます。
で、今日やらかしてしまいました。ハイノートでロングトーン(と言っても二分音符とか)をいくつか鳴らす場面で、自分のピッチが悪いんですよ。アンサンブルに溶け込まない。でも今チューニングしたよな。と思い、曲が終わってから、少しの間を見つけてチューニングモードにしてチェックします。開放弦で合っています。でも先ほどのノートを弾くと低いんです。あっと思ってオクターブチェックしましたら、案の定D線が狂っておりました。
リハーサルと思って、1年ほったらかしの楽器をそのまま(一応少し弾いて問題無いかどうか見たのですが)持って行ってしまったのです。その間に、ちょっと不思議ではあるのですがオクターブが狂っていました。結構大きく。サドルが動いたとは考えにくいのですが。弦の変質ですかね。
普通、私はBbとEbを各弦で押さえながらチューナーで測るのですね。アルトサックス、トランペットなどの基音ですので。そこを441Hzとか、コンサートピッチにしっかり合わせておきます。弦楽器など、弾いてるそばからピッチは狂いますから、一度合わせて安心したりせず、曲のエンディングなどでフェルマータしたら、都度自分のピッチをチェックするのです。そういうのが体に染みついていました。けれど1年で忘却しています。と同時にそうした使い方のできない機材を選んでいたのです。
まぁそんなわけで、長々お話ししてきましたが、アンサンブルに必要な基本中の基本は正しいピッチを出すことですが、耳はそれを捕まえるのだけど、汚い響きを作る要因にならないよう、十分な予防をしておくことを怠りました。フレットレスばかり弾いていたせいもあるかもしれません。フレット付き楽器の流儀を忘れていたのでした。だめですねぇ…。
最後に楽器の画像も載せておきます。
Crews Maniac SoundのBe Bottom 21というモデルです。ネックの幅、いい感じにせまいです。ブリッジのサドルは18mm間隔で並んでいます。私が30年近い歳月をかけて「仕事に使う」5弦選びを、地球上のあらゆる場所で製造された100にも上る機種をとっかえひっかえした挙げ句に辿り着いた一本であります。今日も完全に満足しました。フェンダー型の5弦ベースで、ちょっと弾きやすさに難ありと思われる方はチェックして損はないです。でも知らぬ間にオクターブ狂ってたけどね。Schallarブリッジのせいか? この反省を生かして、5周年記念コンサート、大成功へ導くべく頑張りたいです。