オンボードプリアンプの良否

元々、この一連の記事を書くきっかけとなったのはSTR TEシリーズに興味を持ったためです。あの楽器を支配していたのはAguilarのHotシリーズのピックアップとOBP-3というプリアンプだったのは明白です。穿った見方をすれば、そのエレクトロニクスが醸し出す音の印象が、シリーズの見た目や材構成、外周デザインを決めるモチーフになったのではないかとすら思います。それほど、この組み合わせは濃いキャラクターでした。

でもしかし、自分で使うならば、それらを避けます。ということも話しました。多くのプリアンプが、どうもまだ完成形には遠い気がします。その理由を述べていきます。もちろん試した機種は、ごくごく限られており、世の中の全てを知っているわけではありませんので、妄想トークの域を出ません事をお赦しください。

3バンドのミッドレンジを弄った時の動作でお話しするのがわかりやすいかと思います。機種によって中心周波数も、帯域幅も異なりますので、音質変化は様々です。効果的と思えるセッティングも無いわけではありません。

デジタルカメラのデータはピクセルの集合です。画像を拡大して見たい時、画素数を増やすことはできない(類推して生成することはできても)ため、解像度は荒くなります。輪郭がカクカクしてきたり、呆けたようだったり、画像そのものがモザイク状に見えてしまいます。

その例えを思いつきました。ミドルを上げると、音質にも同様の変化を、私は聴くことになります。荒れるのです。ワイルドになったと喜ぶ向きもありましょう。ですが、それでは困ります。

オンボードプリアンプの良否を確かめるには、各つまみを「フラット」と想定される位置にセットし、アクティブとパッシブの変化を聴きます。それが無であることを求めません。ただし、好ましくなければ、その楽器を好きになれません。数日前に書いたとおり、元気がなくなってしまうものも存在します。

ローインピーダンス信号に変換される恩恵を確認し、場合によっては既に音量が上がっていることもありますが、それは置いといて、各つまみを上下させます。ブースト時に、音質の、フィンガータッチへの追随が変化しないかどうか見ます。荒くなる、という例えはここで持つ印象です。

バスは100Hz以下でしょうから、ベースと言えど、基音はE弦からA弦開放くらいまで。すなわち通常演奏の大半の音域で、ミドルが基音のボリュームを変えるわけです(設計によりますが)。トレブルは倍音にしか効かない。ミドルは低音弦には倍音、中音域では基音に作用するので増減の設定がなかなか難しいと感じます。2バンドの方が使いやすく感じる所以です。

これをそのまま結論としてしまっても良いようなものですが、もうちょっとだけ掘り下げましょう。

ジョン・イーストのトレブル・ベース・スタックというEQを愛用しています。ワンノブのスタックポットにしか見えませんがプリアンプです。トレブルノブはプルアップでブライトスイッチとして動作します。トレブルは増減可能で、バスはブーストのみ。この機種は、あらかじめ100Hzを6dBだったか、プリセットで持ち上げてしまいます。これをカットするには、フル装備のプリアンプ、例えばJレトロなどの機種を選ばなくてはなりません。そこが惜しいですが、しょうがなくベースの後でそれをコントロールするとして、ブライトスイッチが非常に有能。

アレンビックは当初よりハイカット・フィルター方式ですが、近年の(といってもここ30年の)流行に対処すべくEQも用意しています。特殊なのはバス、ミドル、トレブルをブースト/カットする3連のミニスイッチをフィルターと組み合わせた回路で、これがまた非常に有能です。これも3dBとか6dBとかの匙加減。

何が言いたいかというと、12dBの可変幅とか、使わないということです。その中間にセットしたいので、微調整を可能にして欲しい。フィードバック回路かと思いますがブライトスイッチは、ちょうどスピーカーキャビネットのツイーターon / off みたいな動作で、状況によって役立ちます。

それらに解像度が失われることは感じません。TCTの話も出しました。あれも0からのブーストなので上げていっても不自然になりません。ミドルだけで全体のボリュームが決まります。バスやトレブルを足していくのですが、ゲインが上がりすぎたらミドルを下げてあげるとバランスします。その時のつまみの位置は、決して5:5:5ではありません。

2バンドで使用するTCTの配線ではミドルの値を決めてしまっているだけなので、バスとトレブルを加えていけばスクープした周波数バランスになります。これは一世を風靡した「ドンシャリ」と呼ばれる特性です。決め打ちしているので多様性に欠けますが、その場合も荒れたり、解像度が悪化したりしません。

オンボードプリアンプの性能が至らない原因は、おそらくは供給電力の問題で、最大でも電池2個の18Vで運用しているせいではないでしょうか。専門家ではないので断定できませんが。だったらブーストを欲張らずにバッファーに徹し、フィードバックを掛けて倍音を強調するセッティングだけを機能にするとか、フェンダー型のように?0からユニティ程度までの範囲で帯域バランスを整えていく方式にするか、素人目線ではそんなことを考えてしまいます。すべからくブースト方向に作られていることが、ある種の限界を生んでいる気がしますが、それもまた広く言えば、アメリカ的な欲望かもしれません。






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