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プライベートスタジオ・リニューアルの過程
自宅にプライベート・スタジオを持つ夢を叶えてここへ越してきたのが2022年7月のこと。以前はPA屋をやっていたり、現役ベーシストでもあるので各種機材が専有面積に対しキャパオーバーなのは承知でした。PAの方は廃業し、大半は処分したもののCD/レコード類、この項では関係ないけれど紙の本が生活空間を圧迫する中、スタジオ内での練習環境が作れた時点で思考停止し、2年半が経過してしまったのは、残り少ない人生の貴重な時間を無駄にしてしまった気がしないでもない。と顧みて、年末から本気で制作環境を再構築する覚悟を決めました。こういう言い方もなんだけど、50代は親の介護に奔走させられ、本来の音楽活動は妥協した、だから取り戻すんだ、という意気を漸く芽吹かせたのが24年暮れでした。
いろんな事情の説明はすっ飛ばして、DTM用のデスクを置きプライベート・スタジオ然とした模様へと計画が進行する中、いま要のモニターが設置できたところです。とは言え、オーダーして納品待ちのデスク天板が来たるまで全ての作業は「仮」として行われています。ですからDSP装備のサブウーハーと音場測定用マイク(とアプリ)、最新のデジタルミキサー(兼オーディオインターフェース)が納品されたとて、ミキサーに関しては未開封のまま。今日は、それらが届いたところから絶賛エイジング中の現在までを画像で辿ります。
汚い玄関を晒すのは恥ずかしいですが、まずは荷の到着直後の図です。
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10インチスピーカー1発のエンクロージャーは、お馴染みのベースアンプとしてミニマムだったりするので、決して邪魔に思いません。BagendでサブウーハーにELFという技術が使われているのを存じていましたが、これもそうです。とにかくローエンドへの再生可能帯域が広く、最低共振周波数が下がるのか、それ以下が出る仕組みなのか、理論はよく分かりませんけれど一桁Hzまで下が出るようです(人間には聞こえないけど)。
昨今のベースキャビが超軽量化されるトレンドに馴れていて、これはサイズ以上に重たく感じますし、移設しない前提ですから傷が付きやすくもあって、取り扱いにはなかなか慎重になります。Dクラス・パワーアンプやDSPが内蔵される精密機械でもあるし。
NeumannのDSP内蔵スピーカーは、別売の測定マイクを所定の設定で用い、部屋で鳴らしたときの特性をフラットにするプログラムを含み、サブウーハーだけ買っても、そこから補正された中・高音をステレオ出力できる機能があります。そこで自前のパッシブスピーカーと組み合わせて最適解を得ようとしたのですが、結構接続に手間がかかり、音が出るまでに時間を要します。
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DSPに頼る前に、まずセッティングに於いて、アコースティックな条件に精密さが問われます。ピアノの前に座ると丁度部屋そのものの中心点の真下になり、そこから壁との距離を取りつつ、LRのスピーカーとで正三角形を描くよう位置を決めます。ところがRチャン側にはスティールラックが置かれ、Lチャンにはレコード棚が置かれており、それぞれの奥行が等しくないために事実上の壁面(棚の面表)間の距離から求められる中心がずれてしまいます。
そしてサブウーハーの設置場所ですが、位相を変えられるので、例えば横向きに置くなどの措置が可能なようです。その上で、定在波を避けるために左右距離の、どちらか1/4の場所が勧められています。これがもろにサテライト用のスピーカー・スタンドと重なってしまい、現状では叶いません。それで室内の左1/4にサブウーハー、家具間の中心から均等に左右の距離を決めてサテライトスピーカーを置くといった、あまり根拠の無い折衷策を取ってみます。とにかく、まず音を聴きたいと思って、ちゃんと詰めるのはデスクトップが届いてからです。
iMacからUSBでLyra2(オーディオインターフェース)へ、バランスアウトからのアナログ接続でKH750の入力へ。信号のデジタル転送だと同軸ケーブルのRCAからBNCへの変換が必要で、数日後に入手しますが、それでも何故か音が出ず悩みました。KH750からパワーアンプのLRへはバランスでアナログ接続し、2チャンネルのスピーカー出力がサテライトスピーカーそれぞれに入ります。
さて、ノイマンのアプリがMacOS10.14(Mojave)で動かしている、このiMacにインストールできませんでした。64bitマシンですし、HPで調べても対応しているバージョンのようなのに開けないのです。それで最新のOSで走らせているインテル版のMacBookProでやってみることにします。アプリは問題ありません。LANケーブルをサブウーハーに繫いで認識もされました。音は無事に出ており、80HZ以下をセパレートしてデフォルトセッティングで鳴らすだけで、めちゃくちゃ音が良くなっています。
ノイマンの測定アプリは、マイクの型番と、もう一つコードと呼ばれる文字列を入力して個体特性をアーカイブから拾うのですが、何度やってもそこでハングアウトしてしまい、実は現状、まだ補正ができておりません。その効果をいち早く体験したかったのに残念です。
結局アプリが使えないのであればMBPからiMacに戻します。これまでリッピングした音楽データがiMacのローカルにしかなく、MBPでは視聴用の音源をTidalに頼ることになって音質がやや劣るためでした。iMacでAudirvanaを通して再生するのが、我が家で一番音質に優れ、アーカイブも幅広く、リスニングにおけるデフォルトです。
iMac上でLyra2をコントロールするアプリを弄くって、MBでは何故かうまく行かなかったデジタル接続が可能になりました。Lyra2→KH750がアナログバランス接続だと歪みっぽく聞こえたのが、はっきりクリーンになります。DSPによる補正の結果はお預けとなりましたが、iPhoneアプリを使って各周波数での音圧を測ってみると以下のようになりました。非公式というか、目安にしかならない、アバウトな数値です。Sound Meterというアプリの無料機能を使い、測定時間は各10秒以上で表示されているアベレージを記載したものです。
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一見良さげで十分にフラットだとも言えそうですが、ローがクロスする80Hzが落ちているので、サテライトスピーカーの口径が7インチくらいだとナチュラルに補填できそうですが、本機ではDSPでブーストしたりするのでしょう。でも実際聴いていて、すでに素晴らしいと思っています。それにしても老いた私の耳は10kHzが、もう聞こえないのですね。哀しいことに出力を認知できるのは8Kまでがいいところです。ローは20Hzが、このサブウーハーで再生されるのが分かります。以前15インチのドライバーを使ったことがありますが、それでもここまで聞こえませんでしたからELFの威力なのかもしれません。注)参照
そんなわけでノイマンアプリの補正機能を使えぬまま、とりあえず音源を沢山聴き、ふとエイジングという概念を思い出し、これまで30時間ぐらい音楽ライブラリを流し続けています。すでに非常に良い音です(また言ってる)。
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注)BagEndに採用されるELFはExtended Low Frequencyの略で現在はアップデートされてInfrasubと呼ばれます。一方Neumannの方はELFF(Extremely Linear Force Factor)なんだそうで、全然別種のテクノロジーでした。似たような名称で混同してしまいすみません。