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仕事用ミニマムシステムを考える 5

ボリュームペダルの選定 2

これまで20個くらいはボリュームペダルを買っては売ってを繰り返した気がします。いかに繊細な道具かおわかりいただけると幸いです。気にならない人は全く気にならず、むしろ、使う必要を全く感じない人もおられるでしょうから、自らの奇人ぶりを晒しているだけかも知れません。ほんの一握りの、沼にはまった人々のために、あるいは自身の中間決算のつもりで記しています。

現在1軍入りしているのはShin's Baby Perfect Volume CustomとWeed mod. Ernie Ballの2機種で、シンズは切り替えを100kΩで使用しているので、共にポットは100kです。前回、ボリュームマックスの状態で、いかに抵抗値が残っているか比較した中で、やはり両者が抜きんでていたことが、選抜を裏付けます。

現場でパッシブベースを使用する際も、実のところ足元にプリアンプ(現在はAtelier ZのM-boxがお気に入り)を置いているのでアクティブベースと変わりません(PUからプリアンプまでの導線の距離がまるで異なります)。というわけで100kΩがローインピーダンスすぎることなく、ベーシストには最適値であると私は断言します。本当にパッシブのまま突っ込むなら250kΩもOKですが、その辺、この後詳しく述べます。

では市場に100kΩのボリュームペダルはないかと探すと、私の知る限り1点のみあって、それがHotoneのAmpero Pressという機種でした。これは同社のデジタルマルチAmperoのコントローラーとして使えるExpressionペダルの体で設計されており、Ampero用の10kΩと汎用性の高い25kΩのバリエーションがあって、私のものは25kバージョンです(ボリュームペダルとして駄目でもLine6に使うことができるため)。

先の残留抵抗レースでカスタム品と遜色ない上位にランクしたHotoneは430gとダントツに軽量である有利さもあって、今回のミニマムシステムに加えることを決定しました。このペダルにはチューナーアウトが無いため、その前で信号を分岐する必要があり、その任はバッファーアンプのSilver Para Bass Bufferに持たせ、KorgのPitchblack X miniへ繫ぐことで完成します。

さて、今日の本題ですが、ボリュームペダルを通しただけでどれほどの音質劣化が起きるのかを比較した結果を公表します。これは感性評価なので主観的なものですし、各項目の4段階で採点していますが、その差はあまりにも微妙ではあります。しかし、これは(個人的に)使えないなーと、2軍どころかファイアーすることを確定した選手もおり、判定は確実ではっきりとした違いなのです。もちろん使用環境が異なれば評価は異なるでしょう。

テストの方法は5ループのパッシブセレクターにそれぞれin-outを接続し1機種ごとにオン・オフしてアンプからの出音を比較しました。アンプヘッドはWarwick LWA500、スピーカーはEuphonic Audio VL108です。仕事で使うセットでもあり、その際はマスターボリューム全開にしますが、家では12時くらいにセット(音量的には6割くらい?)。

第1ヒート
第2ヒート

ベースは最近入手したオーダーメイドのAtelierZ M#265 customで、PUはPJ、サーキットはXTCTとMCT375が入っています。今回のチェックではパッシブ時、プレシジョンのマイクのみ、アクティブ時、両PUオンのセッティング。パッシブトーンは全開、TCTのEQは実戦と同じにしています(TMBは1-5-1くらいでパッシブ時とほぼ同音量)。バランサー仕様ですので、すでに本体内で2個のボリュームポットを通過しており、パッシブ時、あまり鮮度の高い音が出ません。バランサーポットはACカーブですので、センタークリックのところでは両PUとも8割程度オープンで全開になっていないのです。今後見直す可能性がありますが、今回はそのままです。

さて先に結果をお見せしましょう。各ボリュームペダルにはパッシブとアクティブで信号を送り、バイパスと比較し差違をポイントにして評価しました。4段階0は差違がわからない、1は差違があるが無視できる、2はちょっと嫌な感じ、3はできれば使いたくない、と数値が大きいほどネガティブになります。評価軸は、一応高域のロス(音がこもる)、低域のロス(音が痩せる)、音量の低下(音質と言うより音量が変わる)、それと総合的な変化としました。最後の1項は先の3項目の合計や平均ではなく、全体的な印象として採点しました。採点後、総合的な変化量で並べ替えました。ではご覧ください。

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意外な結果でした。ダークホース、VOXのV860が優勝です。残留抵抗はカスタム品ほど低くはありませんが、スタンダードとも言えるボスやアーニーよりダントツに小さく、公称250kΩ(実測223.1k)にアクティブで入れた時、殆どバイパスとの音質変化を感じ取ることができませんでした。パッシブのまま入れるとややハイ落ちしますが、筐体のがっしり感、安定の操作性、買って損のない逸品かと思います。気に入ってしばらく使っていましたが、1.2kgの重量に負けました。

次点、まさに現レギュラー、シンズ100kをアクティブで使用するモード。ロスは3項目とも0ポイントで優秀ですが、やっぱり通すと音が変わるという感覚が否めず、総合で1を付けてVOXの後塵を拝しましたが、それにしても約半分の重量ですから優勝したことにしても良いくらいです。間違いない。

そしてHotoneとWeedですが、共に超優秀。Hotoneは音色そのままで微かに音量が下がる印象があります。Weedはパッシブでハイ落ち、アクティブで音痩せの傾向を感じます。いずれも妥協できる変化量ではあります。過去記事をご覧いただけると分かるとおり、この極微細なロスをどうにかしたいとバッファーなどとブツブツ言ってきましたが、別に無くてもいんじゃないかと思い始めたことを打ち明けます(追い込むことはやめませんが)。重量比で言うと、最軽量のHotoneの価値は高く今後レギュラー入りを決めました。

それより下位の機種について、傾向を述べておきます。1. パッシブベースで使うよりアクティブで使った方がボリュームペダルのネガを感じにくい。2. 25kモデルはアクティブベース直で使うにはインピーダンスが低すぎる(25kΩモデルはしっかりとしたプリアンプでブーストしている後段で使うのがいいでしょう)。当然のことながら25kに直でパッシブベースを入れると、大幅な高域ロスと音量低下が発生しますので、使い方として間違っています。繰り返し述べているようにアクティブベースには100kΩが良好なので、マイナーな市場ですがメーカーがレギュラーで用意してくれると選択肢が広がって有り難いです。

100kΩと言えば思い浮かぶのが、Ken SmithベースのPUバランサーポットが100kΩACとなっていることです。ケンスミスオーナーであった頃、一枚ベールを被ったような音色に不満で250kΩMNに交換したりしたこともありました。しかし彼は元々メイプルボディの楽器にジャストフィットするエレクトロニクスを模索しており、そのブライトさを和らげるために考慮が重ねられたことが理解できます。あるサイトでは、ギターに100kΩのボリュームを使ったとき、PUからの出力インピーダンスは程よく下がると記述がありました。100kΩポットはベースで使うのに興味深い数値であり、同時にケンの慧眼も感じざるを得ません。

因みにSSのエフェクターボードには従来通りWeedを入れ、ベースバッグに収まるミニマムセットにはHotoneを採用、Shin'sが浮く形になりますが、もう一つエフェクターを多用するセットを組む場合に入れたいと思っています。 

最後になりますが、Ernie Ball MVPは内蔵のプリアンプが派手に信号増幅し、ボリュームペダルのネガを消す以上に、彼等の言う「音質改善」を果たすために、個人的には使いたい機種とはなりません。ここにTuner機能を加えたモデルは興味深いですが、ナチュラルなトーンを出力してくれるかどうか確認する必要があります(それ一個で済めば良かったのにね)。ここまでお読みいただきありがとうございました。次回で完結します。

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