小指が届く範囲について

練習ということでは毎日そこそこ頑張っているわけですが、その都度感じている痛痒について話します。それについては、繰り返し形を変えて記述しているので、もしも通巻でお読みくださっている方には、飽き飽きしている内容かもしれませんが、それなりに、今この瞬間にも気持ちが高まっているので記事にします。

4弦のエレキベースでフェンダー・フォーマットなら20フレットまであります。私の指は長くありませんので、E線20フレット(一番太い弦の一番高い音)に小指が届きません。しかし薬指の方が長いので、「ポジション」を取る考えを捨てれば、薬指の「ストレッチ」で押さえることが可能です。これはカッタウェイがもう少し深くあるのであれば解決する問題ですが、20フレット仕様ならば高音域は重視されないだろうとする観測から、放置されています。事実上、薬指で鳴らせるので、死んだ(実在するのに演奏不可な)音にはなっていないので、許容できるとも言えます。要は、設計時点で想定されたユーザーの体格が、私に合致しないと考えることができるからです。ですから届く人はいると思います。

4弦でも、24フレットなどとネック長を延長した場合に、ボディ側のデザイン変更でカッタウェイを深くしデッドな音を消している、言い換えれば、全弦の全フレットを押さえることを可能にしている楽器は存在しています。

そのように設計するのは、設計者の哲学次第です。使えない音があって良しとするのか(なぜなら別の弦上で代替可能だから)、用意したピッチの刻みは全て奏者に開放するのか、ここを考えていてくれるのか否か、それは、ある一定のコンセプトの元で「美しく」一貫性のある演奏法を保ちたいとする奏者からすれば大きな問題です。

ハイポジション、例えば26フレットまである仕様、などという設計をしておいて、カッタウェイは浅いまま、ローポジションを弾くスタイルで高音域にアクセスできないデザインを堂々と採用し、コントラバス同様、表から手で覆う奏法で何ら問題ないでしょ?と無言で問いかける製作者も存在します。

多弦になればなおのことです。うちにある5弦ベースで、小指が押さえることのできるLo-B弦の最高フレットは、最悪なもので17フレットでした。その楽器は24フレットデザインです。他社の24フレットのものでは22まで、それと同じメーカーの21フレット仕様の楽器で20フレットまで、所有する中で一番ネックが細い22フレット仕様の楽器が21フレットまで押さえることが可能です。ちなみにその個体は弦間16.5mm設定と、昨今では珍しいタイプで、一般には弾きづらいとされる範疇のものです。

とはいえ、17までしか押さえられないというのは、あんまりじゃないか、と思うのです。そこから高音域方向へは、4弦の楽器としてポジションの構成を考えるほかありません。せっかく弦が5本あるのに。ちなみにこのベースが採用するブリッジの仕様は弦間18.5mmのもので、サドル位置を3mm幅内で微調整できるようになっていますので、事実上18mmの弦間隔へ変更できます(もちろん一番狭くして使っています)。

6弦ベースではどうでしょう。私の常用する16mm弦間のブリッジが乗っているもので20フレットがなんとか、というところです。ただし、通常の構えでは無理です。しかし、上記の5弦ベースと遜色ないポジション設置可能領域を持っているのは秀逸であると言わざるを得ません。

この6弦ベースのE線での上限が22フレットでした。24フレット仕様ですが、24フレットを押さえられるのはHi-C、G線、かなり無理をしてD線までです。やはりカッタウェイの深さが、実用面からいえば十分ではありません。

これまでの考察で、私が感じることのひとつは、エレキベースのボディ側のカッタウェイは実践的には浅すぎるということです。もっと手を入れられるようにしてくれれば、指が届き、ローポジションと同様のビジョンで使用できるポジションが拡張され、それは一言でいえば「弾き易い」楽器となります。フォデラのMGシェイプなど、わずかな機会でしか触ったことがありませんが、一切の不満が涌かない形状をしています。

そしてもう一つは弦間設定であり、即ちネック幅の問題です。4弦ベースと同間隔に、もう1本、更に1本と弦を増やし、等比的に幅を広げて行ったタイプが、通説では弾き易いとされます。そういう考えは、パッチ的に4弦ベースのポジショニングを分布させる弾き方であれば正しくあり、そうした奏者が圧倒的多数なのだと思います。でも、4弦から多弦に持ち替える最大の動機が、ポジションそのものの拡大にあるとしたら指が届かなくては役に立ちません。

そんなことが練習する度に頭によぎるんですよね。弾きたいと思える楽器の姿が、まだ見えぬ昨今です。でも、上に挙げたFoderaのMGは、もしも買ってみたら、これが理想だったのか〜と溜飲を下げるかもしれません。全然流通してない(6弦ナローピッチなんて見たことない)上、リフォームが丸ごと一軒できてしまうほど高価ですからね〜。なかなか踏み込めない世界です。

さて、ぼやきもこれくらいにして練習に戻ります。

※文中に複数回「ポジション」という語を用いていますが、独自なルール設定のある専門用語ですので、一般の語彙で読み取れる内容とは若干異なるかもしれない点、その詳細はお伝えしませんが、何卒お含み置きください。「ストレッチ」も然りです。


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