ベース弦のスケール、ゲージ、テンションの話 その2

ベース弦(に限らずですが)はパッケージに芯線の太さが共通の単位で書かれており、多くはセットに組まれて販売されます。セットにはライト、ミディアム、ヘビーなどと全体的な太さのレンジがぱっと見でわかるよう区分名も書かれています。普通、楽器が出荷される時にはミディアムゲージ・セットがデフォルトで張られ、その楽器の用途と弾き心地の嗜好に応じて、ヘビーやライトに換えるというような行動が取られます。

エレキベースという楽器が世に生まれ、マーケットを確立してから、専用の交換弦の開発が進み多様化が図られました。フェンダー社が西暦何年までファクトリープリセットにフラット弦を張っていたのか知りたいと思った時がありましたが、わからずじまいでした。いつから現在の標準であるラウンド弦に変わったのか。別の観点からの興味でしたが、今後の課題にしておきましょう。

さて、先日話したとおり、芯線のバリエイションは等差的に広げられてベース一体分のセットが組まれることが多いです。G線からE線まで0.045、0.065、0.085、0.105となります。調律するピッチが等比的に上がっていくのにです。もちろん、張力を決定する要因は長さと質量ですから、芯線のみで質量を代表することはできません。もしかすると巻き線を含めたところで等比的な増減になるような落とし所があるのかもしれませんが、その検証は後の話といたしましょう。

fig.1

上図は、等差的な6弦ベース用のパッケージ、つまり芯線のゲージが0.025から0.125まで0.02インチずつ太くなっていく場合の、各弦を基準にして等比的に増減させた場合に、どのような太さが並ぶのかを算出した表です。左端の列にFからF#までのピッチ名があります。計算上必要なので8弦ベース相当になりますが、あくまで考察するのは6弦ベースまでの範囲になります。次の列はA=440Hzとした場合の平均律の周波数となり、エレキベースの音域で計算されています。もちろん、ここは等比的な増減になります。

その比率で任意の弦(の芯線のゲージ)を増減させた場合の数値が右方向に計算されていきます(色の付いたセルが基準としたゲージです)。右端の列に平均とあるのは、表計算ソフトの利点を生かして付けてみました。平均値は等比に並んではいません。小数点3桁にしたからでしょうか。しかし、厳密にそうでなくても、等比で組まれたゲージセットがイメージできます。

この平均値でのセット構成は、標準の弦よりもD線、A線のテンションを大幅に下げる細さになります。逆にC線はより太くて、テンション上がりすぎないかと心配になります。ローBは、想像通り、全く太さが足りていません。繰り返し芯線で質量を代表するのに無理があることを承知で述べますが、34インチスケールで4弦の標準的なベースにかかっているテンションを得るには、ローBに0.140近いゲージで張る事を推奨されていると読み取ることができます。

単品売りの弦にはローF#などの需要に応えて0.160くらいまでが存在していますから.140や.145なども手には入ることでしょう。しかしその弦が揺れやすいか、という点では不安が残ります。E弦に0.110を張った経験から言えば太すぎる弦はベースらしい質感に欠ける音色しか得られないこともあります。そうした太い弦はダウンチューニング用と捉えた方が良さそうで、近年は、やはり弦を太くするよりスケールを伸ばした楽器で対応すべきと考えられています。

fig.2

2表はライトゲージで同じ計算をした結果です。平均値で見比べた場合、こちらの方が現実的なゲージ選択に思えます。

fig.3

3表は1表での平均値を並べてみて、同じ計算を行った場合です。等比で得られた平均値から等比で算出しているので一致するのが当たり前です。ここでの差分は誤差のようなものです。が、しかし、意外にこの数値は役立つ見込みです。

販売されている弦の芯線は、例外もありますが、概ね0.005インチ刻みのようです。そこで、この平均値(fig.3)で得られる数値を末尾5か0の近い方に寄せて並べ直すと、C弦から0.030、0.045、0.060、0.080、0.100、0.130となります。ヘビーボトムのライトゲージという、従来から見るとアンバランスな構成ですが、ゲージ自体はよく見る数値に落ち着きます。こうしたセット弦が商品としてあるのかどうか、次にそれを見ていきたいと思います(これらの組み合わせが楽器に良いバランスを与えるかどうかは不明ですのでご注意をお願いいたします)。

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