仕事用ミニマムシステムを考える
ベーシストである私にとって、普段音色を変えるエフェクターを必要としません。アンプがあってベースとシールドがあれば演奏できるので、それぞれの扱いやすさ(弾きやすさ)と正確性、そして満足できる音の良さが得られれば文句ありません。
しかし、こと仕事となるとスタイルがあって、まず曲間で譜面をめくったりする間、不用意に楽器の音が外に出てしまわないためにボリュームペダルでのミュートができないと不安です。演奏中から足を乗せておいて、最後の切り際もペダルのオフで終えます。譜をめくり、次の曲のカウントが来たら踏み込んで鳴らす、というルーティンが染みこんでおり、座奏であるならば、そのペダルがクラシックギターで使用されるフットペダルと同じように、腿の高さを楽器保持へ最適化させるのに役立ちます。
チューニングメーターは、リハーサルなどでは常に携帯しているt.c.electricのクリップチューナーがベストソリューションですが、本番となると、ピッチ監視は常時行えないと気がすみません。ペダル型のチューナーに信号を送り、演奏開始から終了まで、バックグラウンドでメーターを作動させています。ちょっとしたロングトーンで視線をやり、その瞬間自身の出しているピッチが上ずったり下がったりしていないか、しばしば確認します(だからこそGotohのペグが安定しないなどと言えるのです)。
現場で、自分のベースからクリーンシグナルを取り出してアンプなりPAなりに送る、その手前で本来ならシールドケーブルただの1本で済むところを、このように信号を引き回さなければならないのは、原理的にクォリティを悪化させるので悩みどころとなります。アン直が最高だと主張する派ですが、実際そうなんですから。
そこで長い年月、MesaのHigh-wireというバッファーペダルを中核に置き、そのチューナーアウトからBossのTU-3Sへ、エフェクトループ内にWeed mod. Ernie Ball VPJr.を配置させるのを基本に、ボリュームペダルの手前に、気分でコンプレッサーを加えたりしてきました。それらとパワーサプライを29x21のボードに据えて4kg前後の鞄がひとつ、エレキベースのギグバッグ(譜面も入れて)と着替えや衣装を含む身辺の必需品を収めるバッグと共に3個口(もちろん持ち込みであればアンプ一式)が通常の装備品になります。アンプが無くとも電車移動は決して楽ではなく、徒歩の距離が長いだけで疲労感は相当なものです。
というわけで、車で行けない場合のミニマルセットは、くだんのエフェクターボードよりも更に縮小し、ベースのバッグにしまい込める規模で構築したいと願うこととなりました。
ボリュームペダルもチューナーも音質を劣化させるので、どこまで妥協できるか、実際に使ってみないことにはわかりません。そうした中でErnie Ballからチューナー内蔵のボリュームペダルが出ていることを知りました。アーニーのバッファー内蔵ボリュームペダルは持っていて、まぁまぁだとは思っていたので、荷物減らしには最適解かもと思いました。
Ernie Ball VPJR Tunerは4万超と、なかなか試しにくい価格ではあります。筐体がしっかりしているので重量は1.18kgあり、ACアダプターも所持することを考えて第一選択とはなりにくかったです。調べるとHotoneのTuner Pressという製品があり、小型のため重量606gと理想的。
こちらは試してみたところ、多機能が災いして音が変わりすぎるきらいがあります。バッファーアウトは豹変してしまうのでパッシブアウトに切り替え、入力でハイインピーダンスとローインピーの選択ができるものの、アクティブベースでもハイインピーダンスの方がまだマシといった使用感。この入力側・出力側の組み合わせで4通りの出音が選べるとはいえ、いずれの場合も自身の楽器の音が固く弾力に乏しい(ダイナミクスが反映されない)現象に、導入を見合わせることにしました。足で踏んでいる場所にメーターがあるのですが、ちょっとずらすだけで端の部分の光り方だけでもジャストか否か確認取れるので使い勝手自体は良好でした。
以前から荷物を最小に抑えたい場合のセットは、ボリュームペダルがShin's Baby Perfect Volumeとt.c.のPolytune3(とACアダプター)という組み合わせでした。シンズは特注の100kΩのポットで、ボードに組んでいるWeed mod.と同じです。過去に相当数のボリュームペダルを試して、ベストは100kΩと結論しているのは、音色によってその2台が残っていることで実証されています。パッシブの楽器でも悪くありません。
大概250kΩ、稀に500kΩのペダルが市場に多く、アクティブのベースに合わないと思うし、25kΩ、50kΩはローインピーダンス過ぎて寂しい音に感じることが多いです(18V以上で駆動するようなプリアンプの後なら良いかもしれません)。
Tuner Pressはボリュームペダルとしてはアクティブなので、音が派手に変わるのは仕方ない。ところがパッシブで動作するAmpero Pressシリーズは100kΩのポットということで、俄然興味が湧きます。重量は430gと激軽。ところが致命的な問題があります。チューナーアウト(インプット信号のパラレル出力)がありません。イン・アウトの他、もうひとつプラグが挿せるのですが、それはエクスプレッションペダルのためのTRSになっています。
Jim Dunlop DVP4が、内部スイッチで3つめの出力をチューナーアウトとエクスプレッション用に切り替えられ絶品ですが。ポットは250kΩなのが不安要素です。重量は560g近辺であることをどこかのサイトで見た記憶があります。ちなみにシンズが666g、Polytune3が262g、単純にこの2体だけで928g。軽いっちゃ軽いけどね。
チューナーを考えます。最近は各社バッファーを積んだチューナーで競っていまして、その音質で選べとさえ巷間言われています。ということはシリーズで使うという前提です。ペダル型チューナーにはフットスイッチが装備され、それは大抵ミュートスイッチとなり、チューナーを使いたいときには信号を送らないのが標準的な仕様となるところ、Polytune3は常時チューナーオンが可能で、フットスイッチはミュート用ですが、音が出ていても調律可能と、それこそが愛用の理由でした。シリーズで使える唯一のモデルかも知れません。
KorgのPitchblack X miniは電池動作が可能で、重量はバッテリー込みで128g。欠点はチューナーを作動させるためにオンにすればスルーアウトがミュートされる。出力を切らないとノイズが乗るのでしょうね。ですから、このチューナーを私が使用するとしたらボリュームペダルにチューナーアウトが付いてなければなりません。Hotoneはそれが理由で落ちますのでジムダンのDVP4が、組み合わせ的には候補になります。もちろんシンズと組み合わせて794gなのは、もう十分なのかも知れません。先日はシンズとTU-3Sで行きましたが、BOSSは204gなので76g軽い。アダプターを省けるのでそれ以上の差です。
これで結論は出たようなものですが、色々調べるうち、魅力的な製品を見つけました。いわゆるCry Babyサイズより少し小型化した、クラシックな形状のXOTIC XVPというのがそれです。重量は853gと書かれており250kと25kの2種類が出ています。
250kに心理的抵抗があるなら25kを選べば良いのでは、と考えます。バルトリーニのオンボードプリアンプにポストEQのマスターボリュームを設けるならば25kです。理屈では悪くないはずですが、購入前に自分の楽器で試す必要がありますね。