導かれるように弾かされてしまった
まだ少し続けます。先週末に島村楽器店主催の信州ギター祭りとギタラバTOKYOに行った話。端的に言えば次なる5弦ベース探しですね。それが土日のこと。間を置いて火曜日、Sugi NB5を総数検査する勢いで都内をぐるぐる回ってきまして、これという1本を見つけたところまでを記しました。
昨日、日曜日の車内でTOTOを聴いていたことにチラリと触れたのですが、ある意味で、それが引き合わせた縁のような気がします。少し前にTOTOのリマスター盤のボックスセットを買っていました。理由は明確ではありませんが、ちょっと確認したい音源もあり、まぁ総括でもしてみようかという軽い気持ちで手に取りました。その音源をUSBメモリに落として、土曜の松本日帰り旅の往復でずっと聴いていた、その続きだったわけです。
信州ギター祭りではデバイザーの方とおしゃべりしたら、それで目的は終わり、あとは見物して帰るだけ、90分入れ替え制ですから、あまりのんびりとしてもいられません。一品ずつ、じっくりと見てはみましたが、試奏の意志はありませんでした。ですがSugiのブースで、ふと35inchはどうかと思い立って弾いたのが、その後の流れを変えました。
対応されていたのは金沢から来られていた島村の店員さんでしたが、弾いていると「営業トークしていいですか?」と割って入ったのが都内在駐のSugiスタッフの方。そこで色々とお話をさせて頂いた中で、マイク・ポーカロが使っていたと教えられました。ポーカロと言えばリプリーのベースを弾いている印象が強くて(もちろんステイタス・グラファイトや、その後のF-bassも同様に)、5弦ベーシストと認識してはいましたが、まさかSugiユーザーであったとは存じませんでした。ローB弦を含む、バンド演奏時の明瞭な聞こえに関しては最高だとコメントされていたようです。
Sugiは2000年代にローンチされたと思いますが、彼はすでにTOTOからは放れていなかったかな?レコーディングされたものが特定できれば嬉しいのですが詳細は掴めていません。その後YoutubeやWebでSugiを演奏するマイクを検索してみても、その姿は確認できておりません。
代わりに杉本さんのインタビューをいくつか見ることができました。そのフィロソフィーやプロダクトのコンセプトには共感できるポイントが多々あり、杉本さんがベースプレイヤーではないことを除いて、楽器製作の姿勢にはケン・スミスとの類似点を見いだすことができます。特に、CNCを使わない、汎用機材での手加工にこだわるところなど、工房にはケンも用いていたコピイング・マシン(Sugiでは主にアーチトップの成形に使われているようですが)があって、同様の手法で工作されているのならば、それだけでも信頼が置けると感じたものです。※杉本さんの言う「コピイング・マシン」とは、左に見本となるボディを置いて、その形状をなぞることで右側に置いた木材を同様の形状に加工していく器具のこと。
数名の職人が比較的小さな一室で、それぞれのデスクに分かれて、担当する作業を行っていく様子にも、非常に好感が持てます。木材の保管量は国内随一と聞きますが、対してその小規模な生産体制は、やはり楽器作りとして本物だと思いました。
Sugi NBシリーズは所有していた4弦、数多く弾いた5弦、そして6弦に通底する特性があって、少し私には苦手な要素を含んだものでもありました。そのちょっと気になる部分を対策した個体に出会えたことが、TOTOのCDを購入したことに連なって導かれたような、またしても不思議な体験となりました。こういうのって「潜在意識」の仕業なのでしょうか。だとすれば、始めから答えがわかっていたことになります。