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決着した6弦フレッテッドについて少し

1/29金に都内を巡り、フレッテッドの6弦に絞って数本を弾いてきた事は書きました。その時の、我ながら意外な反応とはフェンダー・ジャズ・ベース型、あるいは同様の構造の楽器が自分には向くのかもしれないという気付きでした。こんなことは、もうずっと以前から繰り返された議論であり、遡れば4弦ベースから5弦ベースにシフトする際にも、ああだこうだと行ったり来たりのループを辿り、一応もうこれで十分という場所へ20年くらい?かけて行き着いた気がしています。今また6弦でも似たことをやっているのには呆れます。何を学んだのでしょう。

2/1月に午後から家を出て心斎橋へ向かいました。条件にはことごとく当てはまらないはずのアトリエの#285という機種が気になっていて、似た位置づけのXoticも新規の在庫が復活し始めて、おそらくはそれらを製造してるであろう(推測に過ぎません)、T's Guitars本家の在庫があるのを知り、とにかく見てみようと足を運びました。出発地の新横浜は春の訪れを感じさせる穏やかな日でしたが、大阪は小雨が降っていました。新幹線は自由席で3割乗車くらいでした。

1年おきの大阪詣が恒例になってきました。偶然にもそれくらいに在阪の楽器に気になるものが出てくるようで、心斎橋の大手4店と梅田他の小規模店も回ることがあります。日帰りだったり、1泊だったり、旧友と会ったり、車であれば、帰路には愛知県の楽器店に立ち寄ったりします。完全なレジャーであり、ピンポイントでターゲットが絞られていながら、毎回手ぶらで帰ってきます。旅費を使ったので倹約しようと心がけるからでしょうか。気が済むのであればそれで構いません。ただ得られるものは大きいと思っています。

今回も焦点は定まっておりましたが、弾かせて頂いた結果、見送ることを決めました。一連のものは19mmピッチでしたが、それは18mmピッチとあって、より条件に合致するものでした。

ここからは一般論として述べたいと思います。しかもあくまで経験則であり、理論ではなく、的外れなことを言っている可能性もあります。かなり長い間、アッシュ材のベースは好きではありませんでした。私はスラップも、必要に迫られてしかしないタイプのベーシストで、うるさい音楽とも無縁な大人しい音楽にマッチするベーシストなんです。アッシュの音は指弾きでは聞こえたい帯域が聞こえづらく感じる傾向があってステージ向きではないと決めつけていました。まだ暦が20世紀の頃の話です。

その後、そうしたネガを感じさせない楽器と数多く出会う中で、アッシュを理由に嫌悪することもなくなりました。軽い楽器が好きですが、スワンプアッシュには非常に軽い材もあって、歓迎すらしました。ただそこにメイプル指板を組み合わせるのが依然として好きではなくて、前にも書いた通り、それは塗装のせいという仮説を立てました。アッシュ・メイプルで軽い楽器だと、余計グロス塗装の独特なプラスチック感(音が何かに覆われている感じ)を私の耳は聞いてしまいます。豪快な音楽をやられている方には無視しうるものかもしれませんし、重たいアッシュの場合ではそこまで目立たないような気もします。

私が唯一弾いたAtelier Z M285は5kg超えでしたので、それに当てはまるかなと思います。一方、軽くて良好な方は、少し音の中に、個人的に耳に付いてしまう部分を感じました。いずれにしても、ですが、重くてワイドネックな楽器を興味本位に選んでも、あるいはそこから軽い方向、少しだけナローネックな方向にアレンジしてある良品を買っても、結局は長く続かないのではないかと結論づけました。ちなみにもうすぐ決着、と言った2/1のエントリで見ていた方向を、その瞬間に全否定したわけです。

何かに拘泥しているのは捕らわれの身である苦悩を含みますが、このように当てが外れた場合に、かえって自由を得た心は軽くなります。帰宅してnoteをその日の分、何か書かなくてはならないことを思えば19時には離れなければならない。お店の方には、何か美味しいものでも食べていってくださいと送り出されましたが、そこは車内弁当で済ますことにして、付近にある別のお店(関東の人間から見ますと、心斎橋にはイケベ楽器、イシバシ楽器、三木楽器、ミュージックランド・キーの4店舗が集まる楽器街の様相です)を冷やかして帰ることにします。実店舗を訪れれば、Digimartに登録されていない新規入荷分を見つけることもありますし、事実そうでした。

結論から言いますと三木楽器にて購入すべきものと出会いました。ただし、その日は持ち帰らず、必ず一晩寝ること、翌日に頭を冷やしてからもう一度考えようと決めていました。そこにはとても迷うものがもう一本あり、Aを弾くといいなと思い、Bに持ち替えるともっといいと感じ、もう一回Aを弾くと、やはりこの方がいいかも、と堂々巡りを繰り返します。一長一短というわけではなく、競り上がっていく感じ。楽器2本が、互いに僕を買って、私を買って、と主張し合っているかのようでした。奥に、その倍以上の価格のものが吊られており、我々を冷ややかに見つめていました。私は、そちらには興味を持たないふりをしました(帰宅後に触らなかった事を悔やみましたが、失敗であった時の痛手、リスクの大きさを思い割り切ることにしました)。

火曜日に電話を入れ、Mayonesの方を買うことを告げ、それはきちんと整備されて金曜日(本日)に届きました。長期在庫気味でバーゲン価格になっていましたが、試奏時に気になった箇所を伝えて確認を促したところ、手元に届いた状態はベストコンディションでした。接客から調整、納品まで、誠実、真摯であり、実に快適に取引させて頂きました。Mayonesの名が記されたダンボールからハードケースを引き出す際には、なんともきっちりと梱包をされていて苦労しましたが、そもそもが誇りを持って作られたものであることを語るに足るほどでした。

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セットネックかボルトオンがいいと言いましたが、スルーネックです。だったら癖のないメイプルが良いのですが、こちらはウェンジがメインでメイプルとパドゥオクをミックスしています。17mmピッチ以下が良いのですが18mmピッチでブロードネックとナローネックの中間くらい、34インチスケールと決めていましたが6mm長い34.25インチでした。アッシュ・ボディウィングにバールメイプルを貼り合わせています。指板は通常エボニーであるようですが、この個体はローズウッドが選ばれています。エボニーの持つクラシック楽器的な粒立ちが得られないのは残念ですが、その場合はアッシュとの組み合わせが個人的に鬼門なので、これはこれで良かったと思います。

このモデルは27フレットありますので、よく使う12〜15フレットあたりのポジションが群を抜いて弾きやすくできています。それが決め手でした。私の手に合うほど十分にナローではないのですが、その恩恵があって、ローB弦13フレットを小指で押さえることができます。今求めている弾きやすさの追求に鑑みれば市場に存在している中でベストであると確信できました。

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PUはバルトリーニ準拠のソープバーサイズでアギュラーのシングルコイルとダブルコイルのセットです。シングルコイルの方はハムノイズが出るはずですが今のところうまく消されています。ブリッジ側にこれだけ寄っていながらダブルコイルであるためか、アパチャーが広く落ち着いた音色を保っています。アクティブ/パッシブの切り替えスイッチがあり、常時使えるパッシブトーンコントロールまで備わっています。私にとってこれは不可欠なので改造無しに得られることは福音です。

色味は濃いパープルでバール杢の派手さが抑えられていますが、近くへ寄ると中々にアブストラクトな模様が伺えます。ネック・ボディは一体構造となっていますので塗装も全面的に施されており、ボディトップ以外は黒のサテンに色づけされています。もしこの楽器がグロス塗装でしたら手に取ることすらなかったかもしれません。偏見が過ぎるでしょうか。逆にだからこそ手にするチャンスが与えられたことに感謝します。その差異はどうであれ。

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ネックのサイドドットと指板面のポジションマークがLEDとなっており、緑に輝きます。サイドは消していると無印同然ですので、弾く際にはonすること必至ですが、光ってしまうトップのマークがどれほど目立つのか、ささやかな不安もあります。営業仕事には持って行けないかもですね。

このメイワンズが優勝するまでのトーナメントのひと勝負ずつを、実況ならぬレビューしたい気持ちもあるのですが、売られている商品、将来それを買われる方のいる商品に負のイメージを付加するわけにはいきませんので自主規制します。もちろん買ったものが買わなかったものに対し、優れている謂れはありません。求めていた像に合致したか否かだけですので、どうぞご理解ください。断じて優劣ではありません。

購入品の説明だけに、少々長く費やしました。楽器をわが家にお招きすることが珍しくない生活ですが、隠しがたい興奮をお赦しください。これからこの一本が頼もしい相棒になってくれれば幸いです。では筆を置きます。また

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