Alusonic Aluminium Instrumentsの3
イタリア人ベースプレイヤーGianni Gadauの演奏するアルソニックの音をご紹介しましたが、彼のチャンネルではLaurusの試奏動画も上がっているので是非聴いてみて下さい。イタリア人ルシアーの作品も、近年、より多彩に日本に入ってきていますが、いずれにも素晴らしい音楽センスが漂っています。
アルソニックのベースは、簡単には2モデル、ジャンゴとJスペシャルです。前者はミュージックマン・スティングレイを彷彿とさせ、後者はフェンダー・ジャズベースを基本にしています。それらはボディ外観もですが、主に
ピックアップ構成に色濃く反映されています。前者にはビッグポールのラージハムバッカーを基軸に、後者は2箇所に分離されたピックアップをブレンドさせるコンセプトになっており、それに伴い、それぞれに特化したサーキットが用意されています。
私は、Jスペシャルのファンですが、弾いてみても、自分が使うならそれだと思いました。ちなみにジャンゴではMM的ハムの他にシングルコイル、あるいはスプリットコイルのフロントPUが足されていますが、タップを含むバリエーションの中ではリアハム1発、すなわちスティングレイそのもののマイキングが一番好きでした。というわけで試奏はJスペシャルに絞られていきます。
在庫は3本ありました。本日の時点で1本のみがwebで公開されており、残りは新しい入荷ですのでインターネットには上がっていません。弾かせていただいた楽器をABCとして、まずは仕様をご紹介します。
Aは、2018年製作のGianni Gadauがデモンストレーションした楽器とほぼ同仕様に見えました。アッシュボディ、カーボントップ、塗りつぶしのメイプルネック(潰し塗装は2ピースではないかと想像します)、指板はグラファイト、ただしピックアップがスタックのハムキャンセル(見た目上シングルコイル)となっており、2ボリュームです。その理由は後で説明します。
Bは、同じくスタックハム(Geek In Boxからのリクエストとのことですが、それに応えるために新規開発されました)でエレクトロニクスが同じ。ボディはアッシュ、ステンレストップ、ナチュラルサテンの1ピースメイプルネック、メイプル指板になります。Aとはボディトップと指板が異なり、やや重量があります(と言っても軽量な部類です)。
Cは、Gianni Gadauが弾いたのと同じ、デュアルコイルPU搭載で、エレクトロニクスが標準仕様、ボリューム+バランサーとなっています。逆にボディ構造はBと同じでアッシュボディや、メイプル/メイプルネックなどがナチュラルで明るい色なので、ステンレスの鮮やかなカラーがとても映えます。
2018年にウルトラ・ライト・シリーズと銘うったのは、おそらくカーボントップにして、ステンレスとの重量差をフィーチャーしたのではないかと思われます。ちなみにモデル名に、デラックスとスープリームというサブネームが付加されますが、前者はウッドボディとのハイブリッド、後者は無垢アルミ(カーボンバック)という仕様です。スープリームの方がオリジナルに近いデザインですね。私はそちらを試していませんので、デラックスとスープリームの音色の違いについてはノーアイディアです。
ABCという3本のJスペシャル・デラックスですが、まずはデュアルコイルを積んだCから弾かせてもらいました。ダークグラスのヘッドアンプにEBSのスピーカーでした。ステンレス素材はプラシーボなのか、その原因について不案内なものの、非常に高域成分が良く出ています。パキパキでもシャラシャラでもなくチャリチャリと言えば近いでしょうか。独特でした。サドウスキーでトレブルブーストした音とは異種です。もっとナチュラルにそれは出てきます。アクティブ・パッシブの切り替え可能で、パッシブにしても存在します。パッシブ時には、いずれもパッシブトーンとして動作するノブがありますので(アクティブの時はトレブルのブースト/カット)そこを弄れば、いい感じに収まります。
アクティブでトレブルを下げてもいい感じで、ミッド、バスの効き具合がツボを押さえています。元々明瞭度の高いサウンドで、ネオジミウム・マグネットのホットなサウンドと相まって温かな音色を作りやすいです。つまり籠もらせないでそれができます。低域方向をプッシュすれば、分厚くパンチのあるサウンドもすぐに得られます。第一印象として、元気があるけれど深みもあって、汎用性が高い、PUバランスをどう振ってみても使える音、というもの。動画で様々な音楽ジャンルにフィットするトーンを繰り出していましたが、まさにそこが真骨頂でした。
私は、動画のサウンドが気に入っていたので、このデュアルコイルの楽器が一推し(しかしwebに上がっていなかったので、お店で初見です)でした。しかし次にAを弾いてみて、思いは移ろいます。
まずAを手にしたとき、軽っと声が出ました。ウルトラライトです。ですが、動画のものとはPUが異なります。そして出てきた音は、非常に纏まっていました。先のCが、マディに思えるほどすっきりしています。ものすごく音がフォーカスします。GIanniが弾いていたものよりも良いかもしれないと思いました。日本の音楽環境で、特に使いやすそうです。ジャズベースとして使える。マーカス的にも持って行けるしジャコにもなる(我ながらこの表現は好ましくないですけどわかりやすいでしょ?)。甘いジャズトーン、ソロ向きな音色と迫力あるスラップトーンを自在に使い分けられます。
では、指板がメイプルになり、トップがステンレスになるとどうでしょう。Bですが、これはサイトに上がっているモデルです(ブルーのフレームトップ)。逆に重って思いました。ただし、重量バランスはこの方がいいです。ウルトラライト(A)はボディ側が軽すぎて、ネック側がやや下がり気味傾向です(微妙にです)。こっちの方が姿勢が安定します。で、音の方は、最も一般的な楽器に近づいてきます。さりとて長所そのまま、ネガティブな要素は一切感じません。
そうなると、再びデュアルコイルPUを試したく、Cを手に取ります。重量にはやや違いがありますが構造(材)は同じ、純粋にエレクトロニクスの差です。どちらにも良さがあり、甲乙付けがたいです。試奏前には、ハムバッカーを迎え入れたい気持ちでしたが、このスタックPUは優秀です。Geek仕様に一票入れてもいいと思います。
仮に、3本のうち、どれかを買って帰るのなら、私は値段で決めちゃうかもです。一番安いので。それくらいどれも良かったです。見た目は気にしない。一点気掛かりなのがグラファイト指板です。飽きないか? 未来の自分に約束ができません。そういうとこ保守派です。だけど音はいい。むしろいいかも。
というわけで、何も買わずに帰ってきたのですが、想像以上にアルソニックのJスペシャルは私のお気に入りでした。最初に条件として掲げた、ネックのプロファイルがベストです。過去一弾き易かったかもしれません。そして音色。サドウスキーのできたことはカバーしています。それ以上に振り幅もある。ほうっておいても軽い、これは美点です。見た目もいい。映えますが下品じゃない。
今日はこのへんで。
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