秀逸なタイトル
ネットで本を買えるって、便利ですよね。感性の合う人がネットやブログで紹介している本だと、内容も想像がつくしそのままポチッと押したらいいし。それでも、時々はリアルの書店をぶらついたりもしますよね。
日常の中で何となくスイッチを切り替えるような感覚で、話題書のコーナーや雑誌を見るともなく見たり、店員さんやお客さんの様子をぼんやり眺めたりします。そうやっているうちに、ふと目に入ってくる本があるものです。
料理のエッセイの本が好きでそのコーナーは必ず立ち寄るのですが、そこで見つけたのがこの本。
「かぼちゃを塩で煮る」
ストレートなタイトル、かぼちゃの断面の絵がどーんと。
私、これでピン!ときました。
「この人は私と同じ感性の人だー!」
かぼちゃの煮物というのがキライなのです。あの砂糖と醤油の味付けがどうも美味しいと思えない。
で、読んでみたらやっばりそう。著者・牧野さんもあの味付けがキライ。でも八百屋でとても美味しそうな小ぶりのかぼちゃが目に止まる。どうしようか、と逡巡していたら、お店のおばさんが「塩だけで煮てごらんなさい、美味しいわよ」というのでようやく決心して買った、という話。
この一編は「かぼちゃの塩煮」というタイトル。
この本のタイトルは「かぼちゃを塩で煮る」
能動態のタイトルが、いい。かぼちゃの味は好きなんだ、あの味付けじゃなくて、もっと美味しい方法で料理して食べたいんだー!という強い意志が伝わってくるんですよ。
「かぼちゃ」というごく日常的な食べ物。そして、それを一般的な味付けでなくて「塩で煮る」。
これをタイトルにしたことで、食いしん坊で、毎日の食事に並々ならぬ情熱を注いでいる人の話だな、ということが想像できる。
著者の牧野さん自らがタイトルをお考えになったのかな。もと広告会社にいらっしゃった方だそうなので、そういうセンスにも長けていらっしゃるのでしょう。
エッセイのタイトルも、きっぱりしてるけど可笑しみがあっていいですよ。
「まずいまぐろのうまい食べ方」「ねばねばとぐちゃぐちゃ」「ビジネスホテルでの調理研究」などなど。いいでしょう?
写真は牧野さんの台所風景。
こんなの好きです。オシャレな、とは違う、日々料理をする男が使い勝手のいいように工夫しながら作っている空間、という感じ。左側の布巾ややかんを吊り下げているのは、針金ハンガーを利用しているようです。こんな風にしたい。いいな、いいなぁ。
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