たばこと喫茶店
たばこが止まらない。
やめられないというよりも止まらない。
家の外では紙巻きたばこ、家の中では加熱式たばこを吸っている。
だが私は生粋の出不精であり、最近では専ら加熱式を嗜む事が多い。
加熱式は服や身体に匂いもつかないし吸口も軽いためチェーンスモークがしやすくメリットは多いが、火を着けて灰を落とす仕草、灰皿にたばこを押し付けて火をもみ消す仕草など、ありとあらゆるたばこならではのロマンが排除されている。
非喫煙者からしたらそんな事などどうでも良いだろうし、煙たくて最悪なお話かもしれないが、たばこは嗜好品なのでそういう所も楽しんでなんぼなのだ。
だから私は1ヶ月に2〜3回は純喫茶に行って紙巻きたばことコーヒーを楽しむ。
お客さんの喫煙姿を観察したり、マスターの淹れるサイフォン式コーヒーの洗練された技をじっと眺める。たばこの先っぽを真っ赤に燃やし尖らせながら忙しなく吸う人もいれば、ゆったりとぼんやりと煙を吐き出す人もいる。時々ご老人が居眠りしているのでそれにつられて私も眠くなる。狭いお店なので他人と共有する空気が限りなく近いのだ。
普段なら外にいる時はイヤホンで音楽を聴くが、店内のBGMとマスターと奥さんの会話に耳を傾けたりしているだけであっという間に時間が過ぎてしまう。
静かな店内にはあまり似つかわしくない7〜80年代のロックがいつも流れていて、つい先日はThe Policeの「Massage in a Bottle」が流れていた。
ただ店の空気に身を預け煙を燻らす時間、喧騒から離れて頭をリセットするにはとてもいい場所である。近頃では減りつつある純喫茶、消えないで欲しいと切実に願うばかりだ。
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