1000日チャレンジ 399日目 『A Degree in a Book: Art History: Everything You Need to Know to Master the Subject - in One Book!』Day4 17世紀のオランダ美術①フェルメール
ゴールまで601日
★BMI:24.3
★原著『A Degree in a Book: Art History: Everything You Need to Know to Master the Subject - in One Book!』(John Finlay著;Arcturus ;2020年)、日本語版『1冊で学位 芸術史~大学で学ぶ知識がこの1冊で身につく』(上野 正道監修;ニュートンプレス;2021年)を読みながら、英語で美術史を学んでいく。取り上げられている作品の中から、気になったもの、好きなものをピックアップして紹介していきたい。分厚い本なので、気長にゆっくり進めていく。
◎『デルフトの眺望』(ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer、1632 - 1675)、1661年、マウリッツハイス美術館所蔵)
現存するフェルメール作品の中で、風景を描いたのは、この作品を含めてわずか2点。当時のオランダでは地図作成などのために風景画は描かれていたが、それらは芸術家の描く人物像に比べれば、価値の低いものとされていた。しかし、フェルメールのこの作品は、ただ、風景をちぎり取っているだけではない。2つの門と教会の位置関係、実際の大きさに比べると小さく描かれた川べりにいる人々など、絵を効果的に見せるために、フェルメールが再構成した風景なのである。著者は、この作品を描く際にフェルメールは、”カメラ・オブスクーラ”を使用したと考える研究者が多いことも記述している。建物と水面のぼんやりとした光の効果は、”カメラ・オブスクーラ”を通して見た画像に影響を受けているに違いないと。また、水面の光の反射には、ポワンティエ(点綴法)が使われていることも指摘している。
◎この絵を見て最初に感じるのは、異なる色の雲と空の青さの場所による違い、円形の教会などにあたる強い光と、近景の雲の影に入った部分の暗さの対比、そして川の水面の反射のリアルさ、だろうか。しかし、川に映る建物の影は誇張されて長くなっているようだし、教会の塔の場所も実際の位置には描かれていないという。すなわち、この絵のデルフトは、フェルメール自身が見せたいデルフトの姿なのだろう。この絵が描かれた数年前にデルフトでは火薬庫の爆発によって多くの建物が失われていたことも、美しく再構成された街を描かせる動機にもなっていたのかもしれない。
フェルメールやこの時期のオランダ絵画における風景画は、カメラの出現によって画家たちが何を描くべきか考えていく、印象派以降の美術史の先駆けということなのかもしれない。
☆pointillé(small painted dots);ポワンティエ(点綴法)。白い点描によって、光の反射を表したもの。フェルメールは、『牛乳を注ぐ女』のパンの上に白い絵の具で点を描くことによって、光の粒が輝いているように見せている。
☆camera obscura;ラテン語で〈暗い部屋〉の意味。正しい読みは〈カメラ・オブスクラ〉。暗い部屋で,小さな穴を通して壁に外の景色が映し出されるという光学的原理はよく知られている。紀元前に中国の墨子やギリシアのアリストテレスによって知られていたといわれ,11世紀のイブン・アルハイサムの研究報告やレオナルド・ダ・ビンチの非公開のメモなどにも,その光学的考察の記述が見られる。はじめは字義どおり,暗い部屋の中で日食の観察や絵の下描きのために用いられたが,16世紀ころになるとピンホールの代りに凸レンズが装着され,17世紀に入ると現在のカメラの原型といえる暗箱型のカメラ・オブスキュラが完全な遠近法による絵を描くための“道具”として普及する。(世界大百科事典 第2版より引用)
★out-of-focus;ぼんやりして(焦点がずれて)、cartography;地図製作、pictorialism;ピクトリアリズム(写真の潮流)、convincing;説得力のある、perceptual;知覚の、intrinsically;本質的に
(原著Chapter5; p102-103)