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『賢治と「星」を見る』読了記録 第57回夏休みの本(緑陰図書)(全国学校図書館協議会)高等学校の部を読んでみた(3)

第57回夏休みの本(緑陰図書)(全国学校図書館協議会)高等学校の部を読んでみた(2)

★『賢治と「星」を見る』
渡部 潤一 著
NHK出版 (2023/8/25)
以下、出版社web siteより引用
「天文学者と旅する宮沢賢治の星空
少年、宮沢賢治は夜空を見上げ、何を思ったのだろう?
見つめる星々の先には、何が見えたのだろう?
天文学者も舌を巻くその正確な天文知識は作品にどう映しだされたのか?
天文学の楽しさを一般の人びとにわかりやすく伝え続けてきた天文学者が、賢治が作品に描き出した天体に私たちを招待する。
この本は宮沢賢治の生涯を天体で物語るプラネタリウムだ。さあ、一緒に旅に出よう!」

※感想
今年度(2024年度)は放送大学でも「宮沢賢治と宇宙」という講義が新開講した。こちらは、45分 x 15回のシリーズ。前半は、宮沢賢治の生涯や作品をおさらい。後半は天文学者による、賢治作品を入り口とした天文学の概論といった内容だった。後半はかなり専門的な内容で、途中で賢治さんはどこにいっちゃったの?という感じもしたほどで、素人にはなかなかハードな内容だった。
一方、こちらの『賢治と「星」を見る』を手に取ったときには、放送大学と同じようなパターンかと少し警戒したが、そこは、一般向けの本も書かれている渡部先生、むしろ、一般読者よりの易しい筆致で、でも賢治がいかに深い天文の知識をもっていたのかを解説してくれている。「天文」という切り口ながら、宮沢賢治の評伝として、文学研究者の他著と並び立つような内容だったと思う。
著名な科学者らしく、先達の研究成果・論の引用は出展も明示して書かれてる。(そういう意味では、巻末にも参考文献をまとめて記載していただければ、読者にとっても参照しやすかったのかと思う。)
クライマックスは、やはり第5章の「銀河鉄道の夜」に関する記述だろう。原文の引用を細かくいれながら、賢治の時代に解明されていた天文学的知識についてわかりやすく示しながら、著者(渡部先生)の思いも届いてくる。
秋の夜長に再読したくなる好著に出会えた。

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