『3年間ホケツだった僕がドイツでサッカー指導者になった話』読了記録 第57回夏休みの本(緑陰図書)(全国学校図書館協議会)高等学校の部を読んでみた(1)
第57回夏休みの本(緑陰図書)(全国学校図書館協議会)高等学校の部を読んでみた(1)
★『3年間ホケツだった僕がドイツでサッカー指導者になった話』
中野吉之伴 著
早川世詩男 イラスト
理論社 (2023/8/18)
以下、出版社web siteより引用
「ライター・指導者として、サッカーの世界で活躍中の著者。でも、高校では3年間「ホケツ」でした。上手くなければ試合に出られなくても仕方ない――。そんな常識にとらわれず、サッカーと生きる道を求め、ドイツへ旅立ちます。
編集者コメント
好きで始めたスポーツや部活動なのに、「出番がまったくない」という人も、少なくないのではないでしょうか。自分には実力がないから……とあきらめてしまう前に、この本を読んでみてほしいです。「ホケツでも、チームのために役割があって…」という内容の本ではありません。今いる場所とはちがう場所に「好き」を続けられる舞台があるかもしれない。中野さんの前向きでひたむきなサッカー人生には、そんな希望があふれています。」
※感想
高校在学中にみつけたドイツのサッカースクールへの短期留学をきっかけに、目標をさだめて著者がドイツで”グラスルーツ(草の根)”のサッカー指導者となるまでの物語。能動的に動いたからこそつかむことができる”偶然のつながり”のようなものも有るんだなぁと改めて気づかされる。
高校のサッカー部で出場機会さえほとんど与えられなかった著者の感じた疑問。それは、「今、何かがうまくなかったり、、ホケツだったりするからといって、プレーする権利がないなんてことはない。それですべての道が閉ざされるなんてこともない。あきらめなきゃいけないなんて、おかしいんだ。」(本書「はじめに」より引用)
高校サッカーや高校野球の全国大会に出てくるようなところは、部員100名なんていうところがたくさんある。きっと、3年間、試合に出られない人たくさんいるんだろうなぁ。もちろん、裏方の仕事にも意義はあるし、そこで頑張ることに意味もある。でも、それを能動的に選んだうえでなら、のような気がする。いつか出られるかも、という希望を犠牲にしているのであれば、やはり仕組みとしては間違っている。そもそも日本の教育システムで部活に「スポーツ」という感覚が根本から無かったのだろう。「教育」だとか「体育」だという名のもとに、軍隊のようなヒエラルキーや体罰やパワハラや傷害行為が許されてきた。
著者のドイツでの経験を読んでも、ドイツの人たちが大人になっても、上手か下手か関係なく、スポーツを楽しみ、またそれを地域で応援もしている。今の日本の部活動のありかたでは、学生時代にスポーツから離れてしまう人が多いのもいたしかたないように思う。
著者のように目標に向かって進む人たちが、日本国内でも夢を実現して、これからの子供たちがスポーツを楽しめる、そんな国をつくっていってほしいし、それを応援したい。
高校生だけでなく、大人に是非すすめたい一冊だった。