山梨県立文学館 開館35周年記念 企画展『金子兜太展 しかし日暮れを急がない』
◎ 金子兜太展 しかし日暮れを急がない
【会期】2024年9月14日(土)~11月24日(日)
【会場】山梨県立文学館 展示室C
【主催】山梨県立美術館
【後援】現代俳句協会、NHK甲府放送局、テレビ山梨、山梨日日新聞社・山梨放送、テレビ朝日甲府支局、朝日新聞甲府総局、毎日新聞甲府支局、読売新聞甲府支局、産経新聞甲府支局、共同通信社甲府支局、時事通信社甲府支局、山梨新報社、日本ネットワークサービス、エフエム富士、エフエム甲府
【協力】山梨交通
(以下、文学館公式web siteより引用)
「金子兜太(かねこ とうた、1919~2018 埼玉県小川町生まれ)は、太平洋戦争での従軍体験を経て、戦後の社会性俳句、前衛俳句運動を担う若手俳人として注目を集めました。以後、昭和・平成の俳壇に大きな足跡を残し、歿後6年を経た今も影響力を与え続けています。代表句「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)どれも腹出し秩父の子」「彎曲し火傷(かしょう)し爆心地のマラソン」をはじめとする作品、飯田龍太ら同時代の俳人や文学者との交流、俳人の枠をこえた幅広い活動の様子を取り上げます。」
リンク↓
https://www.bungakukan.pref.yamanashi.jp/exhibition/2024/03/post-107.html
★感想:私の金子兜太さんについての知識と印象は、”元銀行マンで現代俳句界の長老、若いころは異端の存在だったとか?、豪放磊落、時に厳しく、でもお茶目”という感じだった。NHKの俳句講座をたまに観て、金子兜太さんの回だと熱心に観ていた。俳句を日常的に作るわけではないが、短歌を作るので、俳句にも興味はある。晩年のNHK俳句で、金子さんが、ご自身の作られた作品であることを忘れて批評して、さて、どなたの作品かな?となって、誰も名乗り出ず、あら、自分のだったか?と気づかれるという回があった。その際、金子さんは豪快に笑いながら、私もとうとう焼きが周ってきたか?とおっしゃっていたのが面白かったのをよく覚えている。
今回の展覧会で、金子さんの創作の根っこには、従軍体験や日銀長崎支店勤務時に見聞きした原爆の悲惨さへの思いがあったことを初めて知った。
今回の展示で印象に残った句を紹介する。
◎「酒止めようかどの本能を遊ぼうか」(『両神』所収)
自伝的エッセー本のタイトルにもなっている句。季語がない。痛風によくないから酒は止めようかと思案している時の句のようだ。酒止めて何しろっていうんだ!という豪快なユーモアを感じる作品。
◎「彎曲し火傷し爆心地のマラソン」(『金子兜太句集』所収)
前の句とは全く違うヒリヒリした句だ。長崎でのマラソン大会を走る選手の背景に原爆で彎曲し火傷した被爆者の像が浮かんだということのようだ。この句にも季語はない。しかし、爆心地という言葉が、もう暑い暑い夏を示しているのではないか。
◎「おおかみに螢が一つ付いていた」(『東国抄』所収)
これは難解な句だ。言っていることはわかるが、この用のものなのか?すでに絶滅した狼に蛍が一匹ついていた?よくわからないが、豪快な感じがして好きな句だ。
定年まで銀行員として働きながら前衛俳句の第一人者になり、その後、大学で教鞭をとりながら文筆活動を行った金子さんの経歴と意欲に満ちた人生は私自身の手本としたい生き方だ。
※今回のお土産