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恋の海葬【ショートショート】(お題「塩人」)

「山上サクラさんのお宅ですか?」

 玄関先に訪れた塩人しおんちゅの少年は、貝殻を手にしている。大叔母の言った通りだ。

「サクラは、私の大叔母です。十五年前に他界しました」

 私は懐から、形見の貝殻を取り出し、少年の貝殻に重ねた。



 二枚の貝殻は、僕の手の上で、ぴったりと合った。伯父から聞いていた通りだ。

「僕は、大浜カナメの甥です。伯父は、先月亡くなりました。遺言で、遺灰を届けに来ました」

 鬼人おにうどの女性は頷いた。赤い唇。吸い込まれそうな瞳。

 塩作りに明け暮れる塩人しおんちゅの遺灰は、鬼人おにうどの大好物と聞く。

 だけど、伯父の気持ちが、分かる気がする。



「では、海にご一緒しましょう」

「海に?」

 少年は首を傾げた。褪せたシャツ。陽に灼けた肌。

「大叔母の遺灰は、海に撒きました。カナメさんと同じ海で眠りたいというのが、遺言です」

「それは、伯父が、心から望んでいた事です」

 少年の頬に赤味が差し、瞳が輝いた。

 大叔母の気持ちが、分かる気がした。


(絵:清水はこべ)


 田原にかさんの企画「#毎週ショートショートnote」に参加しました。

 お題は「塩人しおんちゅ」。

 今回のお題のお陰で、noteのルビの振り方を覚えました! 勉強になりましたし、楽しかったです。

 田原さん、ありがとうございます。


 タイトル絵は自作です。ibisPaintで描きました。

 海の絵は難しいけれど、楽しいですね。色々描いてみたいです。

お目に掛かれて嬉しいです。またご縁がありますように。