『早く判断をする』≠『少ないタッチでプレーする』であり、『早く判断をする』=『少ないタッチでプレーする』である!?

タイトルを見て「都合のいいことを言うな!はっきりせい!」と思う人もいただろうけれど、このはっきりしないものがサッカーというスポーツであり、この意味をうまく解釈できていることがサッカーというスポーツを理解しているということであると私は思う。

ただ一つこれだけは私の結論としてはっきりさせておきたいのは
『早く判断をする』≠『少ないタッチでプレーする』
というプレーが存在するということだ。


サッカーにおける判断とは?

サッカーというスポーツで目の前に現れているプレーというのは本来起きていることのごく一部である、と言われていたり言われなかったり。
人間が動作を行う際には脳という中枢制御機関(最近はそうではないという見方もあるが)で処理が行われて抹消に信号が送られて起きているとも言われ、パスという動作も目の前で起きる以前にさまざまなプロセスを経た上でその目の前に起きている。
ミスというものの8割は目に見えない部分に原因があるとも言われている。
「認知」「判断」「実行」というプロセスがあるとしたら実行のミスは2割程度だと。(私はそもそも認知のミス・判断のミス・実行のミスと分けて考えるという考え方に反対ですがここでは分かりやすく)

では目の前で起きている
『少ないタッチでのプレー・多いタッチのプレー』
『時間をかけないプレー・時間をかけたプレー』
で判断のスピードは測れるのか?
答えはNO!

その人があえてタッチ数を増やしてプレーすることを素早く判断し実行していた
時間をかけることを素早く判断して実行していたらどうだろうか?

目の前で起きている現象は全てではないのだ。

いつ時間をかけて、いつ時間をかけないか?の基準

ただこの投稿で改めて論じたいのはそもそも『時間をかけてプレーするべき場面と時間をかけずにプレーするべき場面の判断の基準』そして『時間を変えてプレーする意味』についてだ。
私の周りでその基準を持っている人が少ないと感じる(あっているかあっていないかではなく持っているか持っていないか)。
だからここのプレーについて論じるときに『ボールを持っている時間が長い!もっと判断を早くしないと!』という抽象的な指摘になるのだ。

ここで時間をかける・かけないのメリットデメリットについて整理しよう。

『時間をかけない』
メリット:プレッシャーを受けない、スペースが離れている場所にある場合に素早くそこに届けられる、ボールは人が走るより速く動く
デメリット:相手を引きつけられない、コントロールやパスにおいて時間的余裕がないのでミスが起きやすい
『時間をかける』
メリット:相手を引きつけられる・ボールの持ち方で相手の矢印をコントロールできる、ボールを良い位置に置き直すことができる
デメリット:相手にプレッシャーをかける・陣形を整える時間を与えてしまう

・・・適切かどうかは置いといて良い部分と良くない部分がありどちらかが良くてどりらかが悪いプレーではないことはお分かりいただけただろう。
つまりこれはサッカーにおける永遠のテーマである『状況に応じて使い分ける』ことが必要なのだ。
だからタッチ数が多くなった結果取られたら「判断が遅い!もっとタッチ数を少なくして速く!」と一括りにいうのではなく、基準においてその判断が適切であったのか?という分析をしなくてはいけない。

ではその基準とは?
ざっくりというと『相手のプレスの矢印』である。
その矢印がどこにどれくらい向いているのか。
簡単にいうと自分に対して向いていないのに速くプレーすると次の人に強い矢印が向くし、自分に対して2本の強い矢印が向いているのにゆっくりプレーするとその矢印を有効活用できない。
ただこれは小さい局面の話なので、例えば自分に矢印が向いていないとしても自分から離れたところで相手の矢印を折れそうな選手がいる場合は素早くプレーした方が良いかもしれない。
相手が守る”ゴール”というものを攻略するためには、相手の守備の狙いの逆をついて相手の背後に進まなければいけないため、相手からボールを取られないという目的のもとただ少ないタッチでのプレーを繰り返してもたどり着く先は相手のプレスの前か外である。それだと中央の背後にあるゴールには辿り着けない。
つまり状況次第ではあるが『ゴールを奪う』という目的のもとにプレーしなければ行けばいけない。目の前の状況がそう、目の前の状況をどうにかし続けるというのが目的ではないのだ。

どこで何を得たいのか?

この議論を締めにしたい。
サッカーというスポーツにおいて『どこで何を得たいですか?』
私は『ペナルティーエリアでシュートを打つ時間とスペース』を得たい。

ではこれを得るためには何が必要か?
『相手を誘ってずらして引き摺り出して逆をとる』
『ペナルティーエリアに侵入する前段階で相手を前に来させて背後を空けさせる』

だから、むしろビルドアップの段階では相手のプレッシャーを受けてほしい!
そこでプレスを受けないということはつまり相手は前に来てくれなく背後を開けてくれないし、矢印が出ないとそれを折ることができないので逆を取ることができなく、最後の最後に時間とスペースを作れない。
目の前の局面から逃げて逃げて失わないことを基準にプレーしていたら最後の最後に美味しい思いはできない。
ただその中で、相手がプレッシャーの矢印を強く向けてくれていて受けなくても最後の最後に時間とスペースができそうなら早く少ないタッチでプレーしてほしい。
私はフィードバックするときの基準はそこである。

一方で、自陣でのビルドアップの際には特に『一旦プレスを回避する』という考え方は持たなくてはいけない。なぜならば『ゴールを守る』という表裏一体の考え方も必要だからだ。サッカーの目的は勝利することであるので。

複雑なものは複雑なまま解釈しましょう

これは最近よく言われることですね。
コーチの都合の良いように、言いやすいように複雑なものを単純化してしまってはいけない。
目の前でボールを失った選手に対してその逆を言い続ければコーチは正解になる。
ただサッカーはそう単純ではない。
あなたの指摘が次の場面での選手のミスにつながっているかもしれない。

「タッチ数が多い!」といった次のプレーで
広いスペースでフリーな選手が自分以外いない状況で2タッチでパスしてしまいボールを失ってしまうかもしれませんよ。
それは『判断の早い良いプレー』ですか?

フットボールは複雑で奥が深く、それでいてシンプルで分かりやすいから魅力的なのです。
フットボールの魅力を存分に。

余談ですが・・・
ヨーロッパのサッカーを見ると意外とドリブル(突破の”レガテ”ではなく、運ぶ”コンドゥクシオン”)が多いんですよね。緩急があるというか。
4タッチで緩めて1タッチでいきなり加速するみたいな。1タッチで加速して4タッチで緩めるみたいな。
日本に来た外国人選手がいう「日本のサッカーはスピーディー」っていうのは多分この緩急がないことを言うのであって走るスピードではないのではないのかな?
でも世界のサッカーの方がスピーディーに感じるのはこの辺の緩急なのかな?
よくスペインから伝わってくる”パウサ”っていうのもこの辺に関連しているのかな?
日本の育成年代でよく聞くコーチングもボールを持つことを悪とするコーチングが多くある気がしますが、世界に近づくためには見直していきたいですね。

文章で伝えるのは難しいけれど、とりあえずアウトプット。

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