売主が負う瑕疵担保責任と設備の保証について詳しく解説!
不動産の個人間売買の多くの場合、物件引き渡し以降定められた期間内は、売主が契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)と引き渡す設備の修復責任を負うことになっています。
この責任の特徴は、期間内であれば引き渡し後であっても責任があり、売主自身が把握していなかった部分についても責任を負う点です。
売主の立場でも買主の立場でも、瑕疵(欠陥)については正しく理解しておくようにしましょう。
■契約不適合責任の原則
契約不適合責任というのは、
引き渡した物件の品質が、契約前に物件の状態として物件状況等報告書などで告知した内容と異なった場合に、売主の負担で修復する義務を負う、という責任です。
大きな特徴は以下の通りです。
1)責任期間は一般的に、引き渡し完了日から3ヵ月以内。買主から瑕疵発見の報告を受けた日が責任期間内であれば責任を負う。
2)買主は瑕疵発見の報告と合わせて、補修に急を要する場合を除いて、売主側が当該瑕疵を確認するために立ち合う機会を与えないといけない。(水道管の破裂などはすぐに修理する必要があるので報告と修理を並行して行ってよい)
3)売主が負う責任の内容は、「補修」に限るもので、買主は修復の請求はできても、契約不適合責任を理由に契約の無効や解除、売買代金の減額や損害賠償の請求はできない。
4)土地の契約不適合によって、買主が売買契約を締結した目的(家を建てるなど)が果たせない状況であれば、買主は契約を解除できる。
5)売主は瑕疵の存在を知らなくても契約不適合責任を負うが、その瑕疵の存在を買主が契約時に知っていた場合は、売主は契約不適合責任を負う必要はない。(売主が事前に告知した内容を了解した上で契約をしているとみなされるため)
ただし何でもかんでも瑕疵としてしまうと売主が負担するリスクが大きくなりすぎてしまうため、瑕疵の範囲は具体的に定められています。
■瑕疵に該当する項目
・シロアリの害
木造建物の場合、シロアリによる害が発生している可能性があります。
リノベーションなどで壁を取り壊したりしない限りなかなか発見できない箇所ですが、被害が発見された場合は当該箇所の修復や交換の義務があります。
構造上重要な木材が害を受けてある場合でも、交換や補強などで修復できるものであれば、シロアリの害を理由に契約を解除したりすることはできません。
・給排水管、排水桝の故障
敷地内埋設管を含めて、給排水管の破裂や故障、水漏れなどは契約不適合責任の対象になります。
水漏れなどを発見した場合、売主が確認するのを待っていては被害が甚大になる可能性が高いので、報告と合わせて買主側で修理業者を手配して修理してしまっても問題ありません。
修理後にトラブルにならないように、修復前に被害の様子の写真や動画を残しておくようにしましょう。
・雨漏り
雨漏りの場合、天気や気候によっては放置することで被害が広がる可能性もあることから、売主か仲介業者へ報告し自己修理の許可を得られれば、買主で業者を手配して修理してしまっても問題ないでしょう。
・構造上主要な部分の腐食
これもリノベーションなどで壁を壊してみないと発見できない可能性が高いですが、過去の雨漏りや湿気などにより建物の荷重を支えている重要な箇所が腐食している場合は、当該箇所の修復義務があります。
・地中埋設物
過去の建物解体で発生したガラ、建築資材、浄化槽、井戸、使われていない古い水道管などの、土地の利用の妨げになる地中埋設物が発見された場合は、売主の費用負担で撤去する必要があります。
旧建物の解体や地盤調査、建築工事を行わないとなかなか発見できないでしょうから、買主としてはできるだけ責任期間内に発見できるように早めの行動を心がけたいところです。
・古墳などの重要文化財が出てきた
文化財保護法の適用地域などで、地中から古墳や土偶などの文化財に該当する可能性があるものが出土した場合、一旦工事を中断して教育委員会に報告し、調査を受けることになります。
調査にどれだけの時間がかかるかは分かりませんが、場合によっては年単位の時間がかかるケースもあり、その場合は契約自体が一旦解約になる可能性が高いです。
もちろん買主が希望すれば解除しないという選択もあります。
・不発弾
沖縄ではたびたび出土します。
自衛隊の手ですぐに撤去できれば良いのですが、かなりの期間を要したり、最悪撤去が難しいという事であれば、協議のうえで契約は解除になることもあるでしょう。
・骸骨など
事件性のあるものが発見された場合は、警察が登場することになります。
この場合、不動産自体の欠陥というよりは、いわゆる「事故物件」などと同じ心理的な瑕疵として問題になる可能性があります。
規定外の事項になるため、売主や買主、弁護士等を交えて協議して方針を決めることになるでしょう。
・土壌汚染
工場や病院跡地などではたびたび土壌汚染が発見されます。
土壌汚染は土の入れ替えで解決できることが多いです。
ただし極稀ではありますが、過去には土壌から放射性物質が検出されてニュースになったこともあり、その場合は土壌を入れ替えて浄化ができたとしても、心理的な影響や周囲の注目を浴びることで正常な生活が送れなくなる可能性もゼロではないでしょう。
やはり規定外事項として、協議が必要です。
■契約不適合責任を免責にすることもできる?
売主が宅建業者(不動産買取業者など)の場合は、契約不適合責任を免責にしたり期間を短縮することは法律上認められていませんが、
売主が個人の場合で買主が同意するならば、契約不適合責任を免責にした契約も有効です。
当然ですが買主からすると引き渡し後のリスク低減ができなくなることから、それならば買いませんという人もいますし、リスク費用として売買代金を減額するなどしないと契約にならない可能性が高いでしょう。
いずれにしても、建て物や設備が古く、壊れていても責任を負えないような状態で売却するのであれば、予め広告や販売図面でその旨を告知しておく方が親切でしょう。
■付帯設備の責任について
建物内の買主に引き渡す設備について告知する付帯設備表というものがあります。
設備は故障の頻度や可能性が高いことから、付帯設備表に記載されている設備は契約不適合責任の対象外になっています。
ただし一般的には、設備表の「設備の有無」欄に「有」とし、「故障・不具合欄」に「無」とした物が、引き渡し完了日から7日以内に故障した場合には売主に修理の義務が発生することになっています。
例えば、給湯器が有り、故障が無いと告知してたのに、買主がお湯を出そうとしたらお湯が出ない、などの場合は修理の対象になります。
ただし、全ての故障が修理対象になると売主への負担が大きくなることから、修理の範囲と免責事項が別表によって定められています。
売主の善意と買主の希望により引き渡すが、古くていつ壊れるか分からないため責任は負えない設備については、両者の合意によって設備保証の対象から外すことも可能なので、契約前に十分に協議して、重要事項説明書や付帯設備表に記載するようにしましょう。
■規定外事項:瑕疵起因で契約が解除になったらどうなる?
・仲介手数料等
契約不適合責任が原因で契約が解除になった場合、誰の責任でもないなら原則的には契約は白紙解除とされる考えが一般的なようなので、その場合は、支払った売買代金や仲介手数料は全て元に返還されることになります。
ただし、売主が故意に瑕疵を隠していたなど悪質性がある場合は、おそらく仲介手数料の返還等については弁護士を交えた協議によるかと思います。
・抹消した抵当権はどうなるか
売主が物件を担保にローンを借りていた場合、売買代金などをもとに抵当権を抹消して買主に引き渡しています。
その場合、契約が解除になった際の売買代金の返還の一環として金融機関にも相談することになりますので、抵当権の再設定などが必要になる可能性があります。
・解除による金銭の返還ができない場合はどうするか
売主が受け取った代金を既に使用しているなど、契約解除によって売買代金が返還できない場合は弁護士等を交えた協議になるでしょう。
可能性としては返還できる分は返還し、できない場合は別途借用書などで分割返済していくなどが考えられますが、売主の年齢や資産状況によってはそれすら難しい可能性もあるでしょうから、売主さんは責任期間内はお金をあまり使わないようにするようにしないといけないかもしれません。
・修復費用が膨大
例え修理によって解決できる瑕疵でも、その修理費用が膨大で売主による修復が困難な場合は、協議の上で契約を解除するのが一般的かと思います。
■契約不適合責任を負いたくない場合はどうするか
様々な事情により契約不適合責任を負えなかったり負いたくない場合は、あらかじめ広告にその旨を記載して買主を募集するか、買取業者による買取りを検討しましょう。
契約不適合責任を免責して一般向けに売却することもできますが、そのままでは買主にメリットが全くないため、フルリノベーションを前提とする古いマンションでもない限り、その分相場より安くしたり価格交渉を受けるようにしないと売却しづらいことが考えられます。
業者買取は一般売却よりも価格が下がる一方で、契約不適合責任や設備の責任を負わなくてよいケースが多いです。
■まとめ
引き渡し後に瑕疵が発見されても、ほとんどの場合は修復で解決できることから、契約が解除されることは非常に稀です。
ですが契約解除の可能性もゼロじゃないため、売主も買主も契約不適合責任を正しく理解し、不安ならば事前に建物検査をしておくなど、対策をしておくようにしましょう。