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【論文紹介】内閉鎖筋による股関節の運動が、閉鎖筋膜を介して肛門挙筋による排便・排尿機能へ寄与することを示す解剖学的根拠

内閉鎖筋による股関節の運動が、閉鎖筋膜を介して肛門挙筋による排便・排尿機能へ寄与することを示す解剖学的根拠
Anatomical basis for contribution of hip joint motion by the obturator internus to defaecation/urinary functions by the levator ani via the obturator fascia

J Anat. 2022 Dec 18. Online ahead of print.
https://doi.org/10.1111/joa.13810

(以下、abstractの日本語訳です)

【背景】股関節の運動と排便・排尿機能との関連は、骨盤底筋リハビリテーションの新たなアプローチにつながる可能性があるため、研究や臨床で注目されている。しかし、その解剖学的根拠は未だ明らかでない。そこで本研究では、股関節の筋である内閉鎖筋と骨盤底筋である肛門挙筋との間の力伝達の解剖学的基盤について解析することを目的とした。

【方法】解剖実習体23体を用いて、肉眼解剖学的および組織学的解析を行った。筋肉と筋膜の3次元的構造は、高解像度カメラと3Dスキャナーを用いて記録された。筋線維、腱、筋膜の配置と付着は、マッソントリクローム染色による組織切片で可視化された。

【結果】内閉鎖筋と肛門挙筋は、閉鎖筋膜を介して幅広く接触していた。接触部の高さは24.6±9.1mmであった。組織学的には、内閉鎖筋と肛門挙筋は閉鎖筋膜を広い範囲で共有し、閉鎖筋膜は肛門挙筋の幾層もの筋線維の付着部となっていた。

【考察】排便・排尿機能に対する股関節の運動の寄与は、内閉鎖筋と肛門挙筋の間の広い“面状の”接触によって説明可能である。このような解剖学的特徴は、内閉鎖筋の動きが、肛門挙筋の機能発揮のための基盤を作り、閉鎖筋膜を介した骨盤底支持に寄与していることを示唆している。本研究は、股関節の筋のバランスのとれた適切な動きが排便・排尿機能の改善に有効であることの、解剖学的根拠を提供するものである。

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