【舌神経】鼓索神経も乗ってく?
舌神経は、三叉神経(脳神経5番)の枝である下顎神経から出る太い感覚神経です。
下顎神経は近位で前側と後ろ側に分岐します(前神経幹と後神経幹に分かれる)。
舌神経はそのうち後ろ側、後神経幹の枝の一つです。
舌神経の役割として、どこの感覚を担うかというと、舌の前方2/3、口腔底の粘膜、下の歯(下顎歯)と歯肉の一般感覚を脳に伝えます。
舌神経は、まず口蓋帆張筋と外側翼突筋の間を下行し、さらに内側翼突筋の外側面を下行して口腔に入ります。
このちょうど口腔に入っていくところというのは、上咽頭収縮筋の前方部の外側を通り、
顎舌骨筋の下顎骨への付着部の近傍を通っていきます。
そして、舌神経は外側から舌に入ります。
舌の前方2/3の一般感覚を脳に伝えるわけです。
さて、このようにして、口腔底や、最終的に舌に分布する舌神経ですが、最大の特徴は、『鼓索神経の相乗り』です。
あいのり…?どういうこと…?って感じだと思うのですが、まず、鼓索神経というのは、顔面神経(脳神経7番)の枝の一つで、舌の味覚を伝える神経です。
つまり、舌の一般感覚を伝える太い感覚神経である舌神経が舌に分布するので、「どうせ舌に行くなら、舌の味覚を伝える鼓索神経も一緒に連れてって」「一緒に乗せてって」「相乗りさせてね」ってことなんです。
鼓索神経が舌神経に相乗りしてくるところ、合流してくるのは、内側翼突筋の外側面を下行していくところ(その手前)です。
なので、この部分から先は、「舌神経の中には、鼓索神経の成分も入ってますよ」ってことなんです。
ちなみに、舌神経が、下顎骨の内側面に沿って走る途中に、顎下神経節という神経節があり、ここに枝を出しています。
この神経節は、舌神経に相乗りしてきた鼓索神経の神経節です。
鼓索神経は、味覚を伝える特殊感覚の神経線維だけでなく、唾液腺を支配する臓性運動神経線維、副交感神経線維を含んでいます。
この顎下神経節は、鼓索神経の副交感神経が、二次ニューロンにシナプスする場所なんです。
さて、最後に、臨床に直結する、舌神経最大のポイント。それは、『奥歯のすぐそばを通る』ということです。
舌神経が口腔に入ってすぐのところでは、大臼歯のすぐ内側下方を舌神経が通っているんです。
なので、実は口腔粘膜の上からこの神経を触知することが可能です。
どうでしょうか?みなさん自分の舌神経、触れますか?
で、逆に言えば、こんなに臼歯の近くを通っているので、臼歯や周辺の歯肉の手術を行う際は、「舌神経を損傷しないように注意する必要がある」ということです。
いかがだったでしょうか。
『舌の一般感覚を伝える舌神経』、『鼓索神経との相乗り』、そして『大臼歯のすぐそばを通る』といった特徴をおさえておきましょう。
以上、舌神経の解剖について解説でした。
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