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もりえつりんご
2020年7月17日 22:36
王都ルシナキ第四区画には、天使が遊びに来る。 天使といっても、小綺麗な神の遣いなどではない。この国を築く人間に拾われた、とても人間じみた天使である。 春に三度、冬は二度。決まった訪問は刻の鐘に似て規則正しく、素っ気ない。 カランコロンと、天使だけが正しく鳴らす扉の鈴。それを合図に、牧は日頃背中で寝かしてばかりの角形頭巾を頭に被せた。「こんにちは。茶葉と小麦と、薬草を買いに来ました」