なぜ、人はマーケティングを素通りしてしまうのか。
私は、買い物には池袋のルミネによく行く。
先日、ルミネでは大々的な広告が展示されていた。
その名も「聴く買いものwithゆりやんレトリィバァ」。
ゆりやんレトリィバァさんが、買い物について語っている。その音声が、ルミネの建物内で聴けるスポットがあるのだ。
お店側がルミネと共同して、「流行の裏側」「ファッションの寄り道」といった買い物についての豆知識をゆりやんさんの面白いトークで伝えている。そして、その階にあるお店の宣伝へとつなげているのだ。この音声は、建物の各地のスポットのQRコードから読み取り聴くことが可能である。
私は、この建物全体を巻き込んだマーケティングが非常に面白いと感じた。しかし、実際にQRコードを読み取って、音声を聞いている人はどのブースでも見つからなかった。まず取り組みのあったブースを私のように写真にとっている人も見かけなかった。
もしかしたら、私が通りかかった際にたまたまいなかっただけかもしれない。みんな音声を聴きながら買い物しているかもしれない。本当にそうだったかは実際のところわからない。
普段からマーケティングに関心がある私は、こういった取り組みを主体的に体験してみようと思うが、関心のない人にとっては素通りしてしまう。素人なりに素通りされていた原因を考えてみた。
【1】聴いてクーポンがもらえるといったオトク要素はなかったから
各ブースに、お店とコラボした展示物とQRコード。いつもはない派手なピンクのスポットができていて、目に入らないことはないだろう。
しかし、「聴く買いもの」については、実際に1分程度の音声を聴いて、「ぜひいってみてくださいね〜」という形だった。正直これで「お!じゃあそこのお店行こう」まで繋がらなかった。もしこれで「合言葉〇〇と、店員さんに伝えてみてください。何かいいことがあるかも!?」とゆりやんさんが最後に言って終わったらお店に行く人は増えていたかもしれないし、「音声を聴いてよかった」と思う人は増えるだろう。何が言いたいかというと、聴き手のメリットが少し足りていなかったのではないかと感じた。
もしこれで「音声聴いてPLAZAで合言葉言ったら化粧品のサンプルもらえた!」「クーポンもらえた!」とかがあってSNSで拡散されたら「聴く買いもの」はもっと利用されていたに違いない。そう感じた。
このマーケティングで実際にどの程度お店の売り上げに影響があったかはわからない。要因を可視化するためにもリアルの売り上げにつながる1ポイントがあってもよかったのかもしれない。
【2】誰かといると音声を聴こうと思わない
「聴く買いもの」は、QRコードを読み取ってサイト上の音声を聴く。つまり、買い物しながら聴いてほしいという思いがあったと思う。しかし、基本的に買い物は誰かと一緒に来ている人が多い。2人以上で買い物に行く際に、このQRコードを読み込んで一緒に聴くという行為をするだろうか。私なら気になっても付き添いの友達が関心がなかったら素通りしてしまうだろう。
これは、「聴く」という行為は基本的に1人ですることであり、2人で行う「買い物」という行為とあまりマッチしていなかったという可能性が高い。
どんなマーケティングにも、目的があって実施されている。今回の「聴く買いもの」の目的は「買い物中に各お店にある音声を聴いて、目的以外のお店にも寄り道してほしい」ということなら、実際に効果があったのかどうかは不透明である。何か聴くことだけじゃない楽しみのひと工夫、そもそも買い物は誰かと来るのでその場の人で共有できる工夫があれば良いのかもしれない。
展示物や音声を聴いて、とても惜しいマーケティングだと感じた。折角お店全体で行う取り組みだからこそ、もっと多くの人が体験をしたくなる工夫をしなければならない。だが、私がこのマーケティングの担当者でもかなり難しい。素通りされないマーケティングを作るためにどうすれば良いか。このような仕事をする人たちは常に悩み続けているのだろう。