この土地の大根を未来へ。浮島だいこん再興プロジェクト始動!
黄味がかった葉に、ヒョロリとした根っこ。
ぷっくりと膨れたおしりが妙に愛らしい。
この土地でしか育たないだいこんを未来へつないでいきたい。
「浮島だいこん再興プロジェクト」、本格始動です。
みなさんは「浮島だいこん」を知っていますか?
浮島だいこんは、霞ヶ浦を臨む「元」離島、稲敷市浮島で代々育てられてきた、茨城県の誇る伝統野菜のひとつ。
桂(現城里町)のレッドポアロー(赤ねぎ)、貝地(現石岡市)の高菜と並んで、その土地土地で代々親しまれてきた在来種です。
一般的な青首だいこんと比べて、葉はやや淡い黄緑色。
根の上部が細く、下にいくほど太くなる「下膨れ」の形状に育っていきます。
浮島だいこん最大の特徴は、その非常に柔らかい果肉。
やさしい香りと噛みごたえは、たくあんやべったら漬にすることで真価を発揮します。
「たくあんといえば、浮島だいこん」ということで、長らくこの地の名産品として親しまれてきました。
今も浮島地域に漬物屋さんが多いのは、浮島だいこんの存在があったからかもしれません。
実はこの浮島だいこん、この土地でしか育たない野菜だといわれています。
かつてはこの種を他の地域に持っていき、植え付けを行う試みもされてきました。
ただ、不思議なことにこの浮島地域以外では「下膨れ」の特徴が発現されなかったとか。
浮島地域独特のサラサラとした土地が、独特の形状を生み出しているのかも。
全国的にも非常に珍しいこの浮島だいこんですが、現在では生産している人もごくわずか。
れんこんやトウモロコシの生産こそ盛んであれ、農家の人口は減少の一途をたどっています。
また、この独特な形状は非常に抜きにくく、高齢化する農家には大きな負担です。
浮島地域でもF1の青首だいこんを育てる農家が多くなってきました。
このままでは、伝統的なこの野菜の歴史が途絶えてしまう。
美味しい漬け物を作れる「かぁちゃん」たちが元気なうちに、この味わい深いたくあんやべったら漬を未来に残していきたい。
そんな思いから、この「浮島だいこん再興プロジェクト」は始まりました。
プロジェクトを主導するのは、この浮島地域で常に新しい農業のカタチを追求する「れんこん三兄弟」さん。
そして、同じく浮島地域で農場「おんらが村」の運営を通じて障がい者の仕事づくりに取り組んでいるNPO法人SMSCです。
この秋から始まった「浮島だいこん再興プロジェクト」、今年は来年以降につないでいくため、浮島だいこんの種取りと漬け物の試作を行っていきます。
9月に種を植えた浮島だいこんは、12月を迎えると立派な「下膨れ」の形状に育っていました。
収穫に携わったおんらが村の"村民"たちは、独特の形にみんなびっくり。
下膨れの形はやはり抜きにくく、「筋トレのようだった」と汗を流していました。
収穫した浮島だいこんの中から、いくつかの個体を選別して次年度に向けた種取りを行います。
今は「F1」と呼ばれる1代限りの種を活用するのが主流ですが、在来種である浮島だいこんはこうして代々種を紡いでいくのです。
また、収穫できた他の浮島だいこんを使って、たくあんやべったら漬を作ります。
レシピの監修は、浮島地域で「手しごと」として漬け物を作り続けてきた地元の「かぁちゃん」たち。
試食ができるのは年明けとのことで、今からとても楽しみです。
▼れんこん三兄弟
https://www.renkon3kyodai.com/