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日本の製造業の歴史を紐解いてみる

戦後の経済復興から高度経済成長を遂げた日本の「ものづくり」は、1980年代後半~1990年代前半にかけて、世界トップレベルの評価を受けてきました。

それから30年。
日本の製造業は、先進国としての地位を失いつつあると言われています。
そこで、
①:日本の製造業の競争力に関する歴史的考察
②:日本の製造業の成長を促した構造的要因
③:日本の製造業の競争力を低下させた構造的要因

これらを3回に分けて、過去に行っていたことと、現在起きていること、
そして、「ものづくり」先進国として再度成り立つための考察をお伝えいたします。

初回となる今回は、「日本の製造業の競争力に関する歴史的考察」をお伝え致します。

■「ものづくり」先進国としての日本の衰退?

「ものづくり先進国からの衰退」。
その象徴として、しばしば示されるのが、アメリカの経済誌『フォーチュン』が毎年発表している「グローバル500」にランクインする日本企業の数です。

それまで鉱工業とサービス業に分けて発表していたランキングを統合した1995年版には、日本企業は米国企業の151社に次ぐ149社がランクインしていましたが、2022年版では、国別で3位のポジションをキープしましたが、ランクインしたのは47社と大きく数を減らしています。

さらに製造業でトップ100に入った企業に限って比較すると、
1995年版は、
自動車・自動車部品では、
トヨタ自動車(8位)を筆頭に4社、

エレクトロニクス・電子機器では、
日立製作所(13位)を筆頭に6社、

コンピュータ・事務機器1社、
金属・鉄鋼1社、
産業・農業機械1社

以上の13社がランクインしていました。

しかし、2022年版では
トヨタ自動車(13位)と本田技研工業(61位)の2社にまで減っています。

1995年までは高度経済成長期に培った資産をもとに高い国際優位性を誇った日本の製造業が、なぜここまで低下してしまったのでしょうか。

本章では、かつて日本の製造業がなぜ高い国際競争力を有するまでに成長できたのか、その構造的要因を分析します。

◾️ 日本の製造業の競争力に関する考察

時計の針を約30年巻き戻して、1990年代にまで遡ってみましょう。

戦後の経済復興の過程で、日本の製造業は、高度経済成長をけん引してきました。

1970年代に二度のオイルショックを挟む低成長の時代を迎えましたが、その度に困難な状況を乗り越えて、順調に成長を続けていきました。この間、日本の製造業の成長を支えた要因を、国際経済および国内の両面から考察します。

1980年代から1990年代前半、日本の経済成長を分析する代表的な論考が相次いで発表されました。その先陣を切ったのが、1979年に発表されたエズラ・ボーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』です。

ハーバード大学教授として、主に東アジアの研究を行っていたボーゲルは、日本の戦後高度経済成長を促進した社会的背景として、

  • 日本人の高い学習意欲

  • 高い教育レベルに裏打ちされた高度な官僚システム

これら日本社会固有の要因を指摘して大きな話題となりました。

続いて、1982年にチャルマーズ・ジョンソンが発表した『通産省と日本の奇跡』も、日本の官僚システムが主導した産業政策が果たした役割を指摘しています。

これら米国の東アジア研究者の論考を決定的としたのが、1993年に世界銀行が発表したレポート『東アジアの奇跡』になります。

このレポートでは、日本に続く形で経済成長の軌道に乗っていた韓国、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシアについて、経済成長に果たした政府の役割を指摘しました。

いずれの論考も、日本固有の社会システムや政治システムに成功の要因を求めるものでした。もしこれらが決定的な要因ならば、1990年代後半以降の日本の停滞を説明するのは難しくなります。なぜなら、日本の社会・政治システムが、短期間のうちに大きく変更したとは考えにくいからです。

日本の製造業の成功と失敗を多面的に捉えるためには、これらに合わせて当時の日本の製造業を取り巻く国際的環境や国内の経済条件と各企業の対応を見る必要があります。(山縣敬子・山縣信一)

今回は、「日本の製造業の競争力に関する歴史的考察」について記させていただきました。確信に迫る次回では、「日本の製造業の成長を促した構造的要因について説明していきたいと思います。

「日本の製造業の成長を促した構造的要因とは?」に続く

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