BtoB SaaS 大規模リニューアルにおけるユーザー検証の取り組み
こんにちは。プロダクト推進本部人事のふかしろ(@fkc_hr)です。
エス・エム・エスのプロダクトデザイナーは介護・障害福祉事業者向け経営支援サービス「カイポケ」のフルリニューアルに取り組んでいます。
今回はUXデザイナーとして活躍している蔡長宏(Tsai Changhung) (以下ちゃんほん)さんに、インタビュー形式でカイポケリニューアルにおけるユーザー検証について伺いました!
リニューアル・新規開発ならではの検証の工夫や苦悩をお届けします。
エス・エム・エスでの業務について教えてください
2023年2月に入社しカイポケリニューアルのUI/UXデザイナーとして開発に関わっています。
最初の半年は一つのプロダクトチームで、画面や体験の設計を行っていました。社内のカスタマーサクセスが主に利用する機能だったため、外向けの探索や検証よりも、UIを早くアウトプットすることに比重が置かれていました。
その後チーム横断の「オンボーディングプロジェクト」が発足し、既存のプロダクトデザイン業務に加えてこのプロジェクトにUXデザイナーとして関わるようになりました。
オンボーディングプロジェクトとは
リニューアルのため、新規でカイポケを使うユーザーと既存のカイポケを使っていて、移行してもらうユーザーがいるんです。
なので普通の開発だけではなく、現行版ユーザーにどのように負担なく移行してもらうか?という体験の設計や体制の準備が必要でした。
社内でも初めての取り組みのため、リリースと同時にどういったオンボーディングを提供するべきかの定義から行っています。まだオンボーディングや初回利用の体験設計のない状態で、なにが不足しているのか?という観点から検証する目的で行っています。
横断プロジェクトはどのような方と一緒に進めているのでしょうか
エンジニア、PdMはもちろん、PMMも関わっています。
PMMはセールスやマーケティング部門出身の方も多いため、お互いの専門性や知見を共有しながらプロジェクトを進めています。
直近の検証について教えていただけますか
会社にプロダクトデザイン組織が立ち上がった時、決まった検証プロセスがありませんでした。そこでまず検証をフェーズごとに分け、検証プロセス自体を見直しながら進めています。
最初はユーザーではなく社内で使ってもらいました。介護業界で実務経験があるドメインエキスパートに検証を行い、その様子を撮影した動画鑑賞会をカイポケリニューアル全体で行いました。
正直この時はデザインや方針の策定よりまず「検証とはどういうものなのかをチーム内に浸透させること」に一番重きをおいていました。
その後の検証はどのように変化したのですか
その後、実際のユーザーへの検証フェーズになりました。
ユーザーの日常業務からシナリオとスコープを定義して、タスクを行ってもらうかたちで検証を進めました。
細かなUIの修正点を見つけたい意図もありますが、それより被験者(ユーザー)と開発者のメンタルモデルの食い違いを発見することを目的に精査していきました。
まだ実装途中の状況でしたが、その後の開発や検証が進みやすいようなイシューを出せるようなアウトプットにしていきました。
PdM、PMM、エンジニア、デザイナーがこの検証に関わり、カイポケリニューアル全体というよりは、開発をしているプロダクトチームの範囲内でスピーディーに検証とイシューアップを繰り返しました。
特にPdM、PMMはすべての検証に参加していたコアメンバーだったため、自分と同じ0次情報をもった状態で会話できたのでスムーズでしたね。
そしてそのイシューを整理した結果を、コアメンバーから広げて、PO、エンジニア、デザイナーにも伝えて反復的な改善のサイクルを回してもらいました。
検証の際、参加者に対して意識していることはありますか
「表面的な理解だけでなく、課題に共感できること」を心がけています。
ユーザーがどんな文脈・状況で困っていたかをなるべく具体的に伝えて、ユーザーの課題を自分自身のこととして考え感じられるように気をつけています。そのための時間は惜しまず、場合によっては検証の動画を一部一緒に観ることなどもしています。
検証の目的はロールによっても異なると思うので、必要な情報を必要な粒度で渡せると最高だなと思っています!
最後にチームの課題を教えていただけますか
ここまで検証のお話をしましたが、最終的には良いプロダクト・良い体験をユーザーに届け続けることが大事だと思っています。
プロダクトは改善し続けていくことが前提なので、今提供できる価値を届けつつ、本当にこれが最善か?を問いながら、良い体験を作り続けたいです。
そのために、もっとスマートな検証ができないかということは試行錯誤している最中です。スピーディに検証のサイクルを回すことを理想としたときに、現状ではステークホルダーを巻き込みつつ検証を進行するあたりにまだ時間も労力もかかってしまう。これから工夫していきたいですし、チームとしても伸びしろがあると思います。
また、チームというよりはプロダクトのフェーズの課題ですが、今後実際のユーザーの利用が始まり、フィードバックの量が増えたときに、どうピンポイント・タイムリーにキャッチアップし、対応していくのか?も課題に感じています。
すべての期待にすぐに応えられるわけではなく、どう取捨選択していくかの方針決めはまだできていないので。
プロダクト・チームは大きくなってきていますが、先ほどお伝えした通り、何かを定義しながら、たまには壊しながら、変化させていくことが求められていると思います。
デザイナーも決まったフレームワークだけを当てはめるのではなく、柔軟に、工夫できるようなスタンスの方と良い体験を作りユーザーに届けていきたいです。