見出し画像

蝉の身の上話し

蝉の身の上話しを聞いたのです
ひとりひとり
ジージー啼く蝉の

でもわたしが聞いている内に
季節は進み

蝉たちは一斉に
身の上話しを語り初め
それどころかいつしか
合唱を始めた

感謝の念か、恋の歌か、かみへの賛美か

森が震えるように叫んでいた

でも季節は進み

気づくと
ひとつずつ消えて行く蝉の啼き声

最後にわたしが身の上話しを話す番になると

沈黙だけがそれを聞いていたのだった