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果物のかおりと盆

果物のかおりがしていた
子供の頃

あのかわいかった女の子や
凛々しかった同級生の男の子
みな元気はつらつで
楽しかった

給食を食べるのも遊ぶのも
みかんを投げ合うようで
甘い甘い記憶

年を経てアルバムという
扉を開くと
あの甘いみかんのような記憶が消え

いがぐり頭のみんな

みかんの記憶というより
じゃがいものようだ

不揃いなじゃがいもたち
腐ったみかんはいなかった
腐ったじゃがいもはいた

芽が出たやつもいたっけ
そいつの記憶はわたしの中では
ソラニンのように
嫉妬で輝く

じゃがいもたちは
アルバムという土の中で埋もれ

種芋として
こどもを作ったやつもいたとか

いた、いた、わたし
なんて歪なじゃがいも!

まだあの頃とまったく変わらない泥臭さ
種芋にもならないし
コロッケにも
煮っころがしにもならなかったわたし

ああ、困る
ほんと、困る

そういいながら
みかんの記憶が
じゃがいもの記憶に変わっていく
記憶を振り返る
壮年期の盆