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花束の影

花束など買い
この森の木陰で腰を下ろし
涼む

木々の影は
大きくそよぎ風を運ぶ

わたしは風に運ばれて行く
花の香りをかぎ
眼を細める

限りない木の葉のざわめき
至福の時
わたしは銀の懐中時計を開きひかりを反射させる
飛びゆく鳥や
流れる雲
そよぐ梢

なぜ皆、ひかりの使者であると共に
影をここにもたらし消えて行くのか

かの女に買った
花束に顔を埋めては
匂いをかぎ
空を眺め
地を見た時に
思う

ああ、何故
この美しい花束をひかりに
翳しても
色鮮やかな影ができないのか

わたしは今、ひかりの使者なのに
あの人に渡す花束の影を見て色が無いことに
愕然とし
木々の切れ間から
輝く太陽を
仰ぐ