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蟻とノートと鉛筆と

蟻がノートの上を行く
困らせてやろうとして
鉛筆で何本も何本も道を書き
迷路を作る

蟻は迷うことなく
即席の道など見ることなく
進んで行く

今度はことばを書く
「行き止まり」
「戻れ」
それでも蟻は気にもしないで歩いて行く

そうわたしが書いている
字や線は蟻には何の意味もないのだ

世の中には詩を読まなくても
平気なひとたちがいるように

詩なんて読まなくても
それでも人生に迷わないように

わたしは蟻の歩くがままに任せて
その場を去った

ただノートと鉛筆だけはその場に残して…