ざるうどん
父に怒った
生前の父に
下らないことで
夏にうどんを茹でた父は
ザルにうどんをあげ
わたしを待っていた
なかなか起きてこないわたし
その内、蝿が飛び交って
父は気をきかせたのか
ラップではなく
新聞をそっと
ざるうどんの上に広げて置いた
父なりのやさしさだったのだろう
数時間後
起きてきたわたしは
テーブルにつき
新聞をどかす
にわかに駆け巡る怒り
食べ物に新聞を…
父をずっと待たせていた不条理には
目も向けず
怒りが
何故ならば
ざるうどんの真っ白な麺には
新聞の記事が濡れてインクが落ち
うどんに文字を作っていたのだ
「内閣改造」と
わたしは怒りこんなもの食べられるか!
と席を立ち
おろおろとする
父を置いて
また自室に戻った
父はひとりで
内閣改造のうどんをすすっていたようだ
めんつゆにつけて
もう何年経つことか