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とりわけ美しく

とりわけ美しいものでもないものが
息を潜め
生活の中で暮らしている

雪も降らないのに
一枚覆いを被せられたかのような光

例えばあの家のトタン屋根
例えば夏、蒸してガタつく窓を開け放つ侵食する空の色
例えば仰ぎ見る天井の
昼の星
幾つも幾つも空いた空の孔
そこから零れる光のシャワー

とりわけ美しいものでもなかった者たちが

息を潜めるのをやめたとき
ささやかなるリズムで
美は再び
復権する

何者でもない美は
覆われた美は

隠すことをやめた美は…