大きなキャラメル
遠い記憶
幼稚園のバス旅行
どこに行ったか覚えてないが
バスの中でおやつの時間
めいめいに親から持たされた
おやつを食べる時間
隣の席の子は
なにやら色々な駄菓子を
沢山の色鮮やかな
ある子は小さなドーナツを
ある子は小さな
きな粉棒を
「みんなゆっくり食べるのよ」
わたしはリュックの中から母に持たされた
お菓子のビニール袋を開いた
そこには
大きな大きなキャラメルが
いくつも入った袋
キャラメルだけ
キャラメルだけ
どんなに頑張っても
ひとつのキャラメルを
ずっと舐めているしかなかった
隣の子はスナック菓子に
チョコに…
みんなきゃっきゃと楽しそうにおやつを食べている
わたしは大人が持つような
大きな包装紙に入ったキャラメル
ぜんぜん楽しくなかった
わたしの気持ち
分かってもらえなかった
大きなキャラメルひとつ舐めているだけの
おやつの時間
無いよりはまし
でもあるのなら…
ちいさな子供が楽しんで食べれるような
駄菓子屋さんのような
ちいさなちいさな
沢山の種類が欲しかった…
バスが揺れながらどこかを走っている
せんせいたちはどこに向かっているかを教えてくれない
楽しいところよ
楽しいところ
でも大きなキャラメルの袋を抱えたわたしは
楽しくなかった
それだけはしっかり覚えている