どうしてだろう
どうしてだろう
いままで気にもしなかった
老人の顔
気にもとめなかった
老人の顔
近所のスーパーで
商店街のひとごみに
いつもありふれていた
老人たちの顔
顔、顔、顔
父を亡くしてから、やたら年老いた顔に
父の面影
をさがす
白髪で太い眉
雑踏の中で
取りこぼす程の似たような老人たち
父の破片のようだ
父の分身のようだ
他人なのにこんなにも
似ているなんて
父が死ぬまで知らなかった
こんなに世界には
似たひとがいるなんて
こんなに世界は狭いなんて…
ひとは死んだ者を見おくるかわりに
似た姿の生者をその生活に
迎え入れる
余地を持っている