届かないありがとうのことば

精一杯教室を掃除した時
いつも先生が褒めてくれた

誰かを慰めてやると
感謝の言葉をわけてくれた

道を譲ると
ありがとうと共に会釈された

でもいま、わたしは
車社会に住んでいて
ひととすれ違うのは
いつも車と車

段々と行動とことばは
釣り合わなくなってきた

自転車なら一声でもかけられようが
車からの一声は相手へ警戒心を抱かせるから

昔なら
行動の後にはそれに見合った言葉をかけられたし
かけてこられた

今日、朝早く車で買い物

道端で軍手をはめてゴミ拾いの掃除するひと

通りすぎるだけ
言葉はない

交差点で
こどもの見送りをするお母さんたち
通りすぎるだけ
会釈される

見合ったことばがあげられない
やはり言葉はない

車の窓を開けて声などかけられようか

隣町まで行く間に起きていること
のすべてに徒歩ならば
声もかけられよう

しかし車では

行動に釣り合う言葉がでてこない

ただの感謝のことばすら
排気音にかきけされてしまう

誰に頼まれるわけでもなく
ごみを拾い
花壇に手入れをするひと
早朝、神社の掃除をするひと

見合った言葉がかけられない

ありがとうね
ありがとうね

でもごめんなさい

言葉がかけられなくて…