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夏の重み

光をたらふく食べた女が
よく通る声で話す
台所から街に出ようと

夏の街では手押し車を
押して歩く老女が仏花を差して
何処かに向かう

おれと女は
その老女を追い抜かぬように歩き
ひそひそと笑って話し合う

長い商店街では
自転車と歩行者と犬と
季節がせめぎあい
老女の前をよぎる

老女が向かう墓はきっとあそこだ
そう思った矢先

夏の重みに耐えきれなくなった
街がクラクションを鳴らす

老女の歩みは
果てなく続いた
おれらは
ずっとずっと後をつけた
クスクス笑いを続けながら