ふつうの街のふつうの店で
ナスのヨーグルト和え
小学校の給食で時々出るその一品が苦手だった。
中東辺りにありそうな、おしゃれなヨーグルトサラダではない。ナスとヨーグルト、それぞれがお互いに「俺にオマエは合わないだろ」と主張していた。
「やったー!今日の給食、ナスのヨーグルト和えだ!」と喜ぶ人を見たことは卒業まで一度もなかった。心の中で「日本人なのでヨーグルトではなく醤油か味噌でお願いします」と、つぶやいていた記憶がある。
通っていた小学校では「給食を残してはいけない」という拷問ルールが存在した。私が給食があまり得意でなかったのは、この拷問ルールが原因だと思っている。
子供だからといって常に食欲があるわけではない。ご飯に牛乳という組み合わせは、どう考えても合わない。奇抜なメニューも完食しなければならない。全員が完食した班から昼休みに入れる、という更なる拷問も待っている。
何かに耐えながら摂る食事は、どれだけ栄養バランスが整っていたとしても、たぶん、良い吸収にはならない。
「栄養バランスが"偏った"楽しいごはん」
の方がきっといい。
飲んだ後まっすぐ駅に行くつもりが、皆で立ち寄って食べてしまうラーメン。遅延した電車の運転再開を待つ間、ファストフード店で友人と食べるハンバーガー。しばらくした後に「なんか良かったよなぁ」とぼんやり思うその気持ちは、栄養に近い。
先日、親しい人と有名でもオシャレでもない普通の飲食店に行った。
普通の街の普通の店で、下品でバカでどうでもいい話ばかりしたその日、普通のビールとおつまみは、最高に美味しかった。
いい栄養が、じわじわっと体中に運ばれた気がした。