【音食同源】 第8回:高級ディナーとRATT「Round And Round」
クリスマスが近づいてくると、都内で高級ディナーを食べられる店はどんどん予約で埋まっていくようです。
かくいう僕は某歌姫のディナーショーのチケットを購入したので、否応なく高級ディナーを食べることになると思うのですが、何しろ目的はディナーではなくアーティストですから、食事がどんなものであってもまったく気にしません。何しろ、普段は高級ディナーとは完全に縁のない生活をしています。こうして文章を書いているときも、今日の昼食はチャルメラかはたまた辛ラーメンか、卵を入れようかどうしようか、などと考えている始末です。
例えばお金が莫大に儲かったとして、そんな食生活が変わるかといったら、まったく変わらない気がします。それは、身の丈にあった生活をしたいというよりも、フォーマルな服を着て高級レストランに行ったりする自分がなにかこそばゆいからです。そこはやはり自分自身のアイデンティティといいますか、何しろお行儀よくすましたものが苦手というところでしょうか。それは音楽の好みに直結しています。
1980年に大ブームを巻き起こしたLAメタルの代表格、RATTの大ヒット曲「Round And Round」のMVは、MTV全盛期のポップなミュージック・ビデオとは異をなすものでした。ヘヴィメタルの枠を超えた、ロックの持つ危うさ、レベル・ミュージックとしてのロックを表現したものだったといえます。
食卓でディナーを囲む富裕層の家族。何やら様子がおかしい執事が目くばせすると、徐々に天井からホコリが落ちてきます。天井裏でネズミのごとく潜んでいるのは5人のRATT。そして、執事が運んできたクロッシュ(銀のドーム形のアレ)を開けると、そこのは数匹のネズミが!ぎゃー!!何しろネズミがそれぞれデカめです。これはネズミ嫌いな方はトラウマになるくらいの映像でしょう。今だったら作られていないかもしれません。
間奏に入ると、ギターのウォーレン・デ・マルティーニが天井からテーブルに落下!ドクロ・ギターでソロを弾きまくる姿が最高にカッコイイです。ソロの途中、天井を指さすとロビン・クロスビーとのユニゾンへ。気取った富裕層の高級ディナーを台無しにして大暴れします。いやあ~今だにこの曲を聴くとこのMVが目に浮かぶほど、インパクトのある映像です。
再結成、活動休止を繰り返しつつ現在はツアーを行うなど、精力的に活動している様子のRATT。LAメタルブームで富も名声も手に入れたであろう彼らですが、今でもロックが持つ反逆魂を持って活動しているであろうと、「Round And Round」のMVを見るたびに思うのです。