【音食同源】 第16回:太陽のチーズラーメンとU2『SONGS OF EXPERIENCE』
今年の冬は異様に寒い!日本ってこんなに寒い国だったっけ?と言いたくなるほどです。
ここ数日は太陽が出ていてもめちゃくちゃ寒いですよね。そんな中、渋谷に出かけてみたのですが、道玄坂の途中に「太陽のトマト麺」がオープンしていました。どうやら12月11日にグランドオープンしたばかりのようで結構賑わっていました。本当はその先の百軒店にある名店「喜楽」(雑誌『だいごみ』に取材記事掲載されてます)に行こうと思い、完全に口が喜楽の「もやしワンタン麺」になっていたのですが、ミーハーな僕はつい新店オープンに惹かれて「太陽のトマト麺」に入ってしまいました。他の地域にお店があるのは知っていましたがなかなか入る機会がなく、初入店です。
そして、初めての「太陽のトマト麺」で気になったメニューは「太陽のチーズラーメン」。隣におねえさんも注文していましたから、きっと人気メニューに違いありません。オフィシャル・ウェブサイトにも「トマトスープにチーズとバジルが加わって、濃厚な味に。一度食べたらくせになること間違いなし!」とあります。本当ですか!?だったら尚更食べてみたい。さらにランチタイムのサービスらしく、小さいごはんを無料でつけることができました。どうやら麺を食べた後にスープに投入することでリゾット風にして食べるようです。チーズを入れることで少しでもコク深さを求めたいという本能もあり、すかさず注文しました。
5分程でしょうか、やってきた「太陽のチーズラーメン」をひとくち。おっ、なるほど。想像通りの味。結構美味い。でも何か違和感が。まず麺。なんとなく想像で麺は太いものだと思っていたのですが、結構な極細です。トマト味のスープと絡むようでそうでもない。なんとなく自分には物足りない。そこでタバスコをバカスカ入れてみました。なんというバカ舌でしょう。自分でもがっかりです。いや、もしかしてこれは慣れが必要な味なのかもしれません。そもそも鶏Wスープにトマト、チーズってもともと違和感がある。その開拓精神を受け入れる余裕が今の僕にはない。なんせ、直前まで口が「喜楽」の「もやしワンタン麺」になっていたからね。とはいえ、相当前から存在する「太陽のトマト麺」の人気NO1メニューに今更こんなことを言っている人間は僕だけかもしれません。
戸惑いつつも麺を平らげた頃に、小さなごはんが運ばれてきました。いよいよアフター麺リゾットを実食。これが結構上手い。これはどうしたことでしょうか。日本ならではのラーメンにトマト、チーズというイタリアンなテイストを加えたラーメンから、結局リゾットにしてイタリアに帰っていくこの感じ。まるでアーティストが新境地を目指して変化していった結果、しばらくしてまた素の状態にいったん帰るようなあの感じです。例えるなら、U2。『The Joshua Tree』の大ヒットから『Achtung Baby』『Zooropa』『POP』のエレクトロビート3部作を経て、『All That You Can't Leave Behind』に帰ってきたあの感じ。トマトとチーズを細麺と鶏ガラスープで出来たラーメンと融合させるという実験的エレクトロラーメン期(?)の味はまさにエレクトロビート3部作。そうだ、思い出した。『Achtung Baby』がリリースされたとき、「うん??これU2なのか?」と思ったのことを。「なんか美味くねえな」と思ったことを。それは、前作『The Joshua Tree』の味を求めていたからだったからに違いない。「もやしワンタン麺」を食べるつもりで「太陽のチーズラーメン」を食べてもその味を受け入れられるはずがないのです。
↑ 『Songs of Experience』ジャケ
そして、本来のオーソドックスなスタイルに近いであろう、リゾットを食べたときのこの感じ。『All That You Can't Leave Behind』を聴いたときのあの安心感に似ていました。そして、見た目も含め本来の姿に戻った印象のU2を聴いた後に改めて聴いてみた『Achtung Baby』『Zooropa』『POP』の素晴らしさ。「なぜこの良さが当時は気付けなかったのか!?」まさにバカ耳な自分にがっかりでした。そう、「太陽のチーズラーメン」の味に気付けなかったバカ舌な自分と、エレクトロ3部作の良さに気付けなかった自分。「太陽のチーズラーメン」の真の美味さに気付けるには、きっと時間が必要だということなのでしょう。
いったい何を言ってるのか自分でもわからなくなってきましたが、結局何が言いたかったのかというと、今月リリースされたU2の最新アルバム『SONGS OF EXPERIENCE』はめちゃくちゃ良い、ということです。ダンスビートあり、エッヂお得意のディレイでリードする曲ありと、まさにこれまでの“経験”がすべて表現として昇華された作品ではないでしょうか。もうしばらく聴き込んだら、今回食べた“経験”を活かしてもう1度「太陽のチーズラーメン」を食べてみようと思います。きっとその美味しさがわかるような気がします。