【音食同源】 第25回:Zepp Tokyoのビールとパラモア「Hard Times」
2018年2月21日(水) Zepp Tokyoにて、アメリカのロックバンドPARAMORE(パラモア)の来日公演が行われました。
前作アルバム『Paramore』リリースの際には何故か来日公演を行わなったため、じつに8年ぶりの来日です。しかも東京1回限り。以前から、ことあるごとにSNSはもちろん、音楽情報サイト「OTOTOY」のニュースコーナーでもパラモアの魅力を私情を挟みつつ、いや私情だけで勝手に、誰に求められるわけでもなく取り上げてきた私は、迷うことなく先行予約を申し込みました。同行者等もともと探すつもりもありません。おひとりさまでの鑑賞です。なにしろ、あのパラモアがやってくるのですから躊躇している場合ではないのです。
チケットを購入してから何ヶ月経ったのでしょう。その日はやってきました。ついにパラモアのライヴが観れる。パラモアに会える。というか、めちゃめちゃ好きな紅一点のボーカル 、ヘイリー・ウィリアムスを間近で観ることができる……それだけで、日中に取り掛かった書き原稿や文字起こし、編集作業は炎のようにはかどりました。もしかしたら、文中に何度か「ヘイリー」と入れてしまっているかもしれません。食レポ記事に「この店のハンバーグはまるでヘイリーのように美しく…」と書いていることや、男性ポップスバンドの作品レビューに「このバンドのウィークポイントは、ずばりヘイリー・ウィリアムスがいないことだろう」等と書いている可能性もありますが、そんな事情(パラモアの来日公演当日)があるのですから各編集担当者さまはご容赦ください。
ところで、5作目となる新作アルバム『After Laughter』は、それまで“エモ・スクリーモ”バンドとして認知されてきたパラモアにとって、ガラリと方向転換を図った、80’sテイストのシンセポップ、ニューウェイブな楽曲満載な作品で驚かされました。私としては大歓迎な路線変更です。しかし、知人の1人は、MTVばりの映像によるリード曲「Hard Times」のMVを見るなり「ケイティ・ペリーですね」と思いっきりこちらが予期せぬ言葉を発しました。たしかにこのカラフルさ、そんな感じといえばそんな感じです。そうか、ヘイリー・ウィリアムスはケイティ・ペリーになったのか。そんなバカな。果たしてパラモアはケイティ・ペリーなテイストとこれまでのエモ・テイストをどうライヴで折り合いをつけていくのか?大丈夫なのかヘイリー!?
と、こちらのいらぬ心配は杞憂に終わりました。結論からいえば、ライヴはとてつもなく盛り上がり、最初から最後まで飽きることなく楽しいものでした。オープニングを飾ったのが「Hard Times」だったのですが、暗闇の中でメンバーが登場してバンドがリズムを刻みだし、イントロのリフを奏でた瞬間の爆発ぶりはものすごかったです。ライヴともなれば、やはり楽曲もハードさを纏って表現されるもので、ポップでキャッチーでありながらもエッヂの効いたサウンドがこちらの想像をゆうに越えてきたのです。さすが世界のパラモア。
●今回のビジュアルはこんな感じでした。
そして、なによりヘイリーの見事なヴォーカルと表現力豊かなライヴ・パフォーマンスが素晴らしかったです。ピッチがまったくブレない歌の上手さは特筆ものでした。来日前にはいくつかの公演を体調不良で延期していただけに、日本公演も危ぶまれましたが、まったくそんな様子は感じさせないパワフルさ。定番曲「Still Into You」「That's What You Get」「Misery Business」と新曲とのライヴでの棲み分けもまったく違和感なし。最高のライヴとなりました。
そんな最高のライヴを1人で見に行った私は、会場中段あたりの入り口付近で、壁にもたれて孤独な音楽通を気取っていました。すると、すぐ横のドアから何人かのお客さんがドヤドヤっと入ってきました。見ると、以前からお世話になっている音楽事務所のスタッフさんたちではないですか。この広い会場で同じエリアに入ってくるという不思議な出会いに、ますますエモさを感じざるを得ませんでした。そして、ライヴ中何杯もビールを飲みつつ、ステージのヘイリーに向かい「ウェ~イ」とメロイックサインを繰り出す、某バンドのマネージャー氏。まさに「Hard Times」に追われる日々にも関わらず、自らチケットを購入してロックバンドのライヴを目一杯楽しむ姿勢に、尊敬の念を抱きました。ただし、ライヴ後は通路の壁に度々ぶち当たりながら会場を出るほどベロベロに酔っぱらっていたので、その後どうなったのかは定かではありません。ロックのライヴとビールという組み合わせはそれほど魅力的だということなのだと思います。パラモアはステージ上から「サマーソニック2018」への再来日を公言。夏、ビール、パラモア。今から夏が待ち遠しいです。
●こんな感じでインタビューできたら死ねる、うん。