【音食同源】 第6回:ステーキとレッド・ツェッペリン「The Rover」
普段、ロックバンドへの取材をしていると、90年代~00年代に活躍したUKロックバンドやオルタナティヴバンドからの影響を語る人たちが多く、60年代、70年代に活躍したロックバンドの話題になることはめったにないのですが、先日、あるロックバンドへのインタビューで、レッド・ツェッペリンの話題が出ました。
そこで、取材を終えて帰宅してから「レッド・ツェッペリンのアルバムでどれが好きか?」と考えつつストリーミングサービスでアルバムを順番に聴いてみたのですが、やはり6枚目の『Physical Graffiti』(フィジカル・グラフィティ)が一番いいな、と思いました。僕の世代はツェッペリンは後追いですし、人によっては『ジョジョの奇妙な冒険』第1部に登場するキャラクター、ツェペリさんことウィル・A・ツェペリの元ネタとして知るぐらいの感じだったと思います。ですから、当初はもっとも有名な「天国の階段」が収録された『LED ZEPPELIN IV』がファイバリットでしたが、作品を聴き重ねていくうちにJOJOに、いや徐々に『Physical Graffiti』がベストなのではと感じ始めました。
『Physical Graffiti』を気に入っている理由は、力強い肉感。他のアルバムも力強いですが、例えば『Ⅱ』などはジョン・ボーナムの重たいドラム・プレイがそうした力強さの根底にある気がします。ところが、『Physical Graffiti』は冒頭の「Custard Pie」からバンド全体のヘヴィ感、音の太さが際立っているように感じるのです。特に僕が好きなのは、2曲目の「The Rover」。ミディアムというよりもスローと言ってもよいテンポで繰り出されるジミー・ペイジのルーズなリフ、対照的にスタッカート気味に8ビートでルート弾きするジョン・ポール・ジョーンズのベース、ひたすら重心の低いリズムでバンドを支えるジョン・ボーナム、そのサウンドを背に歌うロバート・プラントのヴォーカル。すべてが気持ち良いのです。
たっぷり腰を据えて聴きたくなるこの曲を食事に例えるなら、ボリューム満点のステーキ。イメージとしては1ポンド、450g程度はあるでしょうか。とにかく食べごたえたっぷりの曲です。「いきなり!ステーキ」や「HERO's」、「ウルフギャング・ステーキハウス」等、ステーキを食べたくなると思い浮かぶ店はたくさんありますが、「The Rover」の重さはまるでプロレスラー御用達のステーキハウス「リベラ」並み。ガッシリ噛み応えがあり肉汁もたっぷりなステーキです。そういえば、元プロレスラーの天龍源一郎がかつて雑誌のインタビューで、「自分のプロレスは例えるならレッド・ツェッペリン」という旨の話をしていた記憶があります。確か当時主流になっていたプロレスをポップスに例えた際に発言だったと思いますが、天龍のプロレスもボリュームたっぷり、噛み応え満点のものでした。レッド・ツェッペリン、ステーキ、天龍源一郎。ヘヴィなサウンドを聴いたりヘヴィな肉をモリモリ食べられるのは、体も精神も健康な証拠。ちょっくら「リベラ」に1ポンドステーキを食べに行ってこようと思います。