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【音食同源】  第28回:Billboard Live TOKYOのフライドチキン&ポテトとトンプソン・ツインズ「King For A Day」

“もしも1日だけ王様になれたなら…”そんな中2でも考えないような妄想を歌にしてヒットさせたのがトンプソン・ツインズ「King For A Day」です。

トンプソン・ツインズとは、1980年代にマクセルのカセットテープ「UDシリーズ」のCMに出演して人気となった3人組のシンセ・ポップ・バンドです。同世代の人で知らない人はいないと思うものの、かといって「トンプソン・ツインズががめちゃめちゃ好きだった」という人の話をあまり聞いたことがありません。あれだけCMで毎日お茶の間に流れていたにも関わらず! 「Tokyo」って曲まであるのに! 別に今更怒ってもしょうがないのですが、なけなしのお小遣いでアルバム『フューチャー・デイズ』を買って夢中で聴いていた私は、大人気バンドだった彼らがあっという間に忘れさられて解散してしまったことが今でも残念でなりません。

正直いって、私も90年代以降はトンプソン・ツインズのことを思い出す機会もありませんでした。しかし、あれは2014年12月のこと。なんと、トンプソン・ツインズのヴォーカルであるトム・ベイリーが単独で28年ぶりに来日、ビルボードライブ東京でライヴを行ったのです。会場はおじさん、おばさんであふれかえっていました。きっと、当時「FMステーション」を熟読し、エアチェックにいそしんだ世代でしょう。もちろん、私もその1人です。ときの流れは残酷です。我々も老けましたがトム・ベイリーも年相応に老けていました。トンプソン・ツインズで活躍していた時代から30年近く経っていることもあり、ふっくらとしつつかろうじて髪型と衣装で当時の面影を保っている感じでした。しかし、独特の甘さを持った歌声はあの当時のまま。会場に足を運んだ人の100%が「あの頃のトンプソン・ツインズを聴きたい」という人だったに違いありません。ライヴはとても盛り上がりました。

そして、アンコール。ここまで私が一番好きだった「King For A Day」をまだやっていない。まさか、やらないなんてことはないだろう、とは思っていたものの、少しどきどきしながら、アンコールが始まるのを待ちました。そして、イントロが鳴りました。「King For A Day」!っぽい!……けどなんか、スローだな。あれっこの歌詞「King For A Day」だな?おかしいね?あれ?テンポが全然違う。あれ?やだねったらやだね。なんだこのアレンジは。どうやら、トムはこの大ヒット曲をバラード調で歌い上げたかった様子。唖然としたまま、ライヴの終わりを告げるアナウンスを聴く私。開演前に注文したものの、ライヴが始まったためほとんど手を付けていなかったフライドチキン&ポテトを口に運んでみたものの、すっかり冷めていて、ますます「King For A Day」のスローバージョンが私の中に冷ややかに刻み込まれてしまいました。私だけではなく、きっとノスタルジーに浸りたい率100%な観客たちは『「King For A Day」が一番聴きたかったのに!』とモヤモヤした気持ちで帰途についたはずです。

しかし、後から冷静に考えてみたのですが、こちらの気分はトンプソン・ツインズを「夜のヒットスタジオ」で観たときとなんら変わっていないのものの、きっとトムはノスタルジーに浸るだけでなく、ヒット曲のどれかで現在の自分のスタイルを提示して知ってもらいたかったのだと思います。それはアーティストとしてまったく正しいことだと思います。今を生きなければアーティストとして活動する意味がないのですから。が、しかし。その1曲を「King For A Day」にしてくれなくてもいいじゃないか。

“もしも1日だけ王様になれたなら…”

そのときの私の答えは、間違いなく“トム・ベイリーに「King For A Day」をオリジナル・アレンジで歌わせる”ということです。

いや、もっと言えば、“もしも1日だけ王様になれたなら…”トンプソン・ツインズを再結成させることもできるかもしれません。「King For A Day」は今でも大好きな曲に変わりはありません。また是非日本に来て改めてオリジナル・バージョンを歌ってほしいものです。



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