見出し画像

【音食同源】  第35回:わかめ酢とジョージ・ハリソン「Dark Horse」

相当前の話ですが、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」で、視聴者からの「道端にわかめが落ちていたのですが何のメッセージでしょうか」的な投稿に対して、松本人志が「おいきみ、わかめられるな」と答えてとても面白かった記憶があります(たぶん)。今こうして書いてみると、まったく面白くはないので、芸人さんの話術とはなんともすごいものだなとたった今感心しているところなのですが、最近、わかめを見直すできごとがありました。

それは、近所のお気に入りラーメン店に行ったときのことです。かなり年配のご夫婦がやっているこのラーメン店は、今ではみかけることの少なくなったチェーン店の1つです。かれこれもう、40年くらいやってるのではなかろうかというくらい年季が入った店ですが、味は確かで、いつもラーメンや餃子、チャーハンを食べに行きます。

店内はカウンターだけですので、1人客が多く、新聞やテレビを眺めながらビールを飲む、といういかにも昭和な風景が見られるのがこの店の良いところ。私も御多分に漏れず何かの仕事がひと段落すると、足を運んでビールを飲んでしまいます。

そんなお気に入りのお店で好きなメニューは前述したラーメン店ならではのものですが、ビールを頼むとお通し的に出てくるのが、「わかめ」です。酢とおしょうゆで味付けがされているようなので、勝手に「わかめ酢」と呼んでいますが、これが美味しい。これをつまみながらビールを飲んでいると、ついついもうこれでいい、むしろわかめをさらに食べてビールを飲みたい、という気持ちになってしまいます。初めて食べたときに、私にとっては、まさにダークホース的な存在でした。そう、ダークホースといえばジョージ・ハリソンです。

リンゴ・スターという名のビールという、ポップな存在とコンビで出てくるジョージ。その後、リズム隊としての役割を無視したかのように派手に登場するポール・マッカートニーという名の餃子。そして、オノ・ヨーコを従えてオリエンタルなムードを漂わせながらやってくるジョン・レノンという名の味噌ラーメン。これだけのスターに囲まれながら「ダークホース」として私の味覚を満足させるジョージという名のわかめ。あのヘロヘロしたピッチがあやしくも魅力的なスライドギターのように、ヒラヒラと舞うように口に運ばれるわかめ。いったい何を言ってるのか自分でもわからなくなってきましたが、ジョージのような素晴らしいミュージシャンの音楽を聴くと、心も体も健康になっていくに違いありません。無理やりわかめとの共通点を探してみた結果、そういう結論になったことを報告して終了とさせてもらいます。

それにしても「ダークホース」。良い響きです。かくありたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?